25/10/2014
先週は、簡単にクラシック音楽が楽しめるサイトを特集させていただきました。
…え?あんなに曲があったら選べないから聴いてない?
それは困りました…!
では、『ベートーヴェンの交響曲』 (金聖響+玉木正之著,講談社現代新書)を読みながら
ベートーヴェンの交響曲を聴くというのはいかがでしょうか?
ベートーヴェンの交響曲は、9曲ともすべて、フィナーレが「笑顔」で終わるようになっています。
暗く終わることはありません。
必ず希望があります。(p.145)
ベートーヴェンについてだけでなく、作曲 する背景となった歴史や譜例、
他の作曲家についてのエピソードも交えての解説を読めば、あなたもきっと聴いてみたくなるでしょう。
今回、内容についてはあまり触れません。
本書を読む時に一緒に聴いてみてもらいたい動画をご紹介します。
クラシック音楽に対して、面白くない、聞き方が分からない、眠い…etc
といった印象を持っている人は少なくないかもしれません。
私自身、そう言われてしまうと返す言葉もありませんでした。
そんな私たちに、金さんは次のように語ります。
クラシック音楽の世界には、少々権威主義的なところがあって、
一流と呼ばれている指揮者が一流と呼ばれているオーケストラを指揮した演奏は、
すべて素晴らしいものであるといった思いこみがあります。
が、必ずしもそれが、本当におもしろいもの、本当に心に響くものとは限りません。
スポーツライターでもある玉木さんの比喩を借りるならば、
サッカーの試合で、ワールドカップの決勝戦がJリーグの試合よりも必ずしもおもしろいとは限らない、ということです。
メジャーリーグのベースボールの試合が、常に日本の高校野球よりもおもしろいとは限らない、ということです。
-p.155
あなたが初めて聴いたクラシック音楽はつまらないものでしたか?
それならば、今こそ、聴いてみる時ではないでしょうか…!
各章の題名と本書の一部とともに、動画をご紹介します♪
交響曲第一番 ~「喜びにあふれた幕開け(p.27-)」~
ベートーヴェン29歳の頃の作品ということで、少し若め(?)のクリスティアン・ティーレマン指揮を選びました。
ベートーヴェンは交響曲を書くために、室内楽曲で実験を重ねました。
興味を持った方は、七重奏や弦楽四重奏なども聴いてみると良いかもしれません。
交響曲第二番 ~「絶望を乗り越えた大傑作(p.39-)」~
第一番の作曲が終わった頃から難聴に悩まされ始めたベートーヴェン。
ウィーン郊外の村ハイリゲンシュタットで遺書を書くほどでした。
そんなハイリゲンシュタットで書かれた第二番ということで、
帝王と呼ばれたヘルベルト・フォン・カラヤン指揮を選びました。
交響曲第三番 ~「新時代を切り拓いた『英雄』(p.59-)」~
当初はナポレオンに献呈しようとされた作品でしたが、
ナポレオンが皇帝の座についてしまったことに落胆したベートーヴェンは
表題を『英雄』という一般名詞に替えてしまいました。
こちらも”帝王”カラヤンの指揮を選びました。(語感が似てるだけ…)
交響曲第四番 ~「素晴らしいリズム感と躍動感(p.83-)」~
第三番と第五番という有名な交響曲に挟まれて目立たない第四番。
この本でも大絶賛されているカルロス・クライバー指揮の映像です。
発売当初、クラシック音楽ファンの間に一大センセーションを巻き起こすほどの大評判になったもので、
これを聴いて(見て)四番を好きになった人も少なくないそうですので、ぜひ!
交響曲第五番 ~「完璧に構築された構築物(p.101-)」~
言わずもがなの交響曲第五番。
本書の中でも、演奏の仕方の違いや指揮者の考えていることなどが書いてあって興味深い章です。
カラヤンと並んで20世紀を代表する指揮者である、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの指揮を選びました。
交響曲第六番 ~「地上に舞い降りた天国(p.137-)」~
ベートーヴェンが自ら書き記した『田園』という言葉通りの曲。
日本人が田園と聞くと、稲作の水田を思い浮かべてしまいますが、
ベートーヴェンが思い描いた田園は羊を飼う草原であり、森の方が近いでしょう。
本書でも所々に登場するレナード・バーンスタインの指揮を選びました。
交響曲第七番 ~「百人百様に感動する「狂乱の舞踏」(p.157-)」~
のだめで一躍有名になったであろう交響曲第七番。
思わず頭に浮かんでしまうのだめや千秋様を一度消して、
40歳のベートーヴェンと向き合ってみてはいかがでしょう。
指揮は、交響曲第四番でも登場していただいたクライバーです。
交響曲第八番 ~「ベートーヴェン本人がもっとも愛した楽曲(p.187-)」~
古典へ回帰したかのような構成になっている第八番は、この時代にしては珍しく、
献呈相手のない作品だったそうです。
第七番と並行して作曲されたものの、聴衆の反応は全く異なるもので、
ベートーヴェンは第八番が評価されないことを嘆いていたとか。
回帰ということで(?)第一番で登場していただいたティーレマン指揮を選んでみました。
交響曲第九番 ~「大きな悟りの境地が聴こえてくる(p.203-)」~
日本では年末の風物詩とも言えそうな第九ですが、
年末にやるのは日本ぐらいのようです。
9つの中で唯一合唱がつき、最後の交響曲にふさわしく迫力のある楽曲ですが、
本書でその背景や演奏の秘密を知るとまた違って聴こえてくる気がします。
2006年にベートーヴェン交響曲全曲演奏の企画を行い話題となったパーヴォ・ヤルヴィの指揮を選んでみました。
最後は、交響曲第五番の章の最後に書かれている言葉を引用します。
あなたは、どんな第五交響曲が好きですか?
評論家の意見などどうでもよいのです。
自分が「大好き」と思える演奏と出逢えれば、
それは素晴らしく楽しいことのはずです。
―p.136
ベートーヴェンの交響曲を全て制覇したであろう今、
あなたは次のステップ「お気に入りの演奏を見つける」に突入しました。
ぜひ、一押しの楽曲 を見つけてみてください。
リファレンス
金聖響+玉木正之『ベートーヴェンの交響曲』(講談社現代新書)
(ライター:シムラ アイキャッチ:wikipedia Beethoven)
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