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最も古いクラシックって?~現存最古のクラシック グレゴリオ聖歌を聴く~

10/01/2015

クラシック音楽というと、クラシック(古典)の音楽なので、
今を生きる私たちにとっては昔の音楽という印象があるかもしれません。
でも、クラシック音楽があった当時はそれがイマの流行の音楽だったかもしれないわけで、
当時の人にとってのクラシック音楽があったのかもしれない…。
そう考えていくと、クラシック音楽の起源って一体どこにあるんでしょうか?
classic of classic of classic of ……

その歴史を調べるべく、図書館で『西洋音楽史』という放送大学の教材を借りてみました。

西洋音楽史

(出典:Amazon)

今回は、岡田暁生の『西洋音楽史』を読みながら、
クラシック音楽の起源とされる音楽に触れてみたいと思います。

 

 

 

西洋音楽史のはじまり

 

 

 

クラシック音楽の起源はどこまで遡れるのか…?
本書によれば、西洋音楽史をどの時代から始めるかということ、
それ自体が既に大問題とのことでした。
それでも、可能性として挙げられるのが、
・古代ギリシャ説
・中世説
の2つだそう。
古代ギリシャ説は、美術史や哲学史に倣った説。
ところが、美術におけるパルテノン神殿や哲学におけるソクラテス・プラトン・アリストテレスのように現存しているものが
音楽の場合はほとんどないため、あくまで理念的なものにとどまってしまいます。

これに対して、理解しやすいのが中世説。
これは、世界史において西洋世界が成立したとされる中世をそのまま西洋音楽史の起源として採用したものです。
中世音楽については大量の楽譜が残されており、
なにより、この時代に生まれたとされるのが今回ご紹介する「グレゴリオ聖歌」なのです。
当時と同じ形で歌われているかどうかは定かではないものの、
中世から絶えることなく歌い継がれてきたものという点から、
「現存最古の西洋音楽」ということができるわけです。

 

 

現存最古の西洋音楽 グレゴリオ聖歌ってなんだ?

さて、そんなグレゴリオ聖歌ですが、
一体どんな音楽なのでしょうか。
本書の定義によれば

「男声により、ラテン語で歌われる、無伴奏/単旋律の、ローマ・カトリックの聖歌」

修道院生活において、聖務日課やミサなど、
いつどの聖歌が歌われるかが決められていました。
一般的に、グレゴリオ聖歌は、
そのようにして古代ローマの時代から歌われてきた様々な聖歌を
7世紀前半に法王グレゴリオ一世がまとめたものだとされています。
(ただし実際にそれが成立したのはもう少し後で、グレゴリオ一世云々は伝説の一種と考えられるそう)
ちなみに、同じキリスト教といっても、
プロテスタント教会やギリシア正教は別の聖歌を用いていたはずなので、
グレゴリオ聖歌はカトリック圏の聖歌をさします。
(プロテスタントの聖歌はコラールと呼ばれ、バッハなどに大きな影響を与えたとか)
平たく言えば、西洋版のお経のようなものと言えるでしょう。

 

そして、耳で分かる最大の特徴は「まだ音と言葉が不即不離に結びついている」(p.35)ところ。
単旋律なので、ハーモニー(=垂直の次元)がなく、拍子もありません。

また、楽譜は、五線譜ではなくネウマ譜と呼ばれるものでした。
Graduale_Aboense_2
(出典:wikipedia)
こちらは、14~15世紀に成立した、聖ヘンリクを讃えた
入祭唱「全てのものよ、喜ばん(原題:Gaudeamus omnes)」のネウマ譜。
この譜面を歌ったものが以下の動画です。

 

 

 

聴いてみよう 「怒りの日」今昔

 

 

本書で著者は、私たちが普段聴いている音楽にあってグレゴリオ聖歌にはないもの、
その最大の違いを「冷えた非感覚」と表現します。

 

聴く者の感情を共振させるぬくもりの感覚を、それ(=グレゴリオ聖歌)は拒絶する。
この抽象性を理解するには、同時代の美術を鑑賞するのがいい。
ひんやりしたゴシック教会の内部に差し込んでくる、
ステンドグラスの不思議な光を思い出してみよう。
ここに典型的な形で現れているように、
中世美術は神秘的な非物質性を目指す。
中世芸術は、現世に生きる人間の楽しみや感情の表現ではなく、神の国からの啓示だったのである。
―岡田暁生『西洋音楽史』p.36

 

歌詞も分からずにずっと聴いていると、
狂気を感じそうになるのは、
「透明な平坦さをもって旋律が運ばれている」からでしょうか。
教会の残響によって増幅される響きは、
時に得体の知れないものに取り囲まれているような不気味な雰囲気にもなったのではないか…
と想像してしまいます。

 

さて、本書で取り上げられる唯一の例が「怒りの日」です。
どのように怒りを表現した歌になっているのかと、半ば期待しながら検索したところ、
「怒りの日」という題名からは想像もつかないような癒しBGMの雰囲気に、
思わず笑ってしまいました。

 

ちなみに、最初に本書を読んだときに「怒りの日」と言われて思い出していたのが、
ヴェルディやモーツァルトのレクイエムにある「怒りの日」。
同内容を歌っているものなので、
比べるとグレゴリオ聖歌の特徴がより分かりやすいのではないでしょうか。

ジュゼッペ・ヴェルディ/「マンゾーニの命日を記念するためのレクイエム」

ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト/「レクイエム ニ短調」

 

 

 

おわりに

 

 

いかがでしたでしょうか。
西洋版のお経みたいだなぁと思った時に、
お経の動画を検索してみたらこんなものを見つけて聴き入ってしまいました。

人が作る音楽の始まりは西洋も東洋も同じなのかもしれない…
遠い昔に思いを馳せたくなる音楽史入門でした。

 

 

 

おまけ

 

グレゴリオ聖歌の音楽的な解説を知りたくなった方はこちらなどをご参照ください。
http://www.mab.jpn.org/lib/exp/cmodes/basis.html
http://www.geocities.co.jp/MusicHall/6654/allelujah2.htm

 

 

 

リファレンス
岡田暁生著『西洋音楽史』放送大学教材
Wikipedia

 

 

(ライター:シムラ アイキャッチ:pixabay)

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