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話題のビジネス書『HARD THINGS』に隠されたモノとは一体… Vol.1

11/05/2015

 

 

湯浅です。ゴールデンウィークも「ヒップホップ充」しました。

 

皆さんはこのゴールデンウィーク、いかがお過ごしでしたでしょうか?

 

ゴールデンウィークに課題図書として今話題のビジネス書『HARD THINGS』をあげていた方をチラホラとTwitterやFacebookで見かけました。そんな本書の著者ベン・ホロウィッツですが、かなりのヒップホップ好きであることを皆さんご存知でしょうか。それが如実に表されている部分が本書にもあります。それはヒップホップのリリック(歌詞)を各チャプターの冒頭で引用しているということです。そこではNasやJay Z、Kanye Westといったラッパーのリリックが引用されています。

そうです、実はこれこそが原書にはあって、翻訳版にはないものなのです。

 

では、なぜ彼はヒップホップのリリックを引用するのでしょうか?今回はその疑問に答えてみたいと思います。

 

 

なぜベン・ホロウィッツはヒップホップのリリックを引用するのだろうか?

 

 

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画像引用:Ken Yeung (Flickr)

 

 

アメリカのナレッジサービスのひとつQuora。こちらに「なぜベン・ホロウィッツはヒップホップの歌詞を引用するのか?」という疑問が投稿されています。そこにご本人(ベン)が登場し、回答をしています。
Why does Ben Horowitz use so many hip-hop quotes?

 

 

Benが初めてリリックを引用したのは「The Case for the Fat Start-Up」という記事で、それは2010年のことでした。その際引用したラッパーはThe Gameでした。彼のこの記事自体が「LAX Files」という曲のリリックにインスピレーションを受けています。

 

 

 

 

Al Pacino couldn’t be no gangsta, DeNiro in “Casino” he no gangsta

Wanna be, wanna see, wan’ get a shovel

Dig Tookie up nigga, cause he know gangstas

 

翻訳

「アル・パチーノやロバート・デ・ニーロは映画でマフィアを演じてはいるものの本当のギャングスタではないため、ギャングスタが何たるかということをわかっていない。本当にギャングスタになりたい、ギャングスタを見てみたいという奴はTookieをきちんと知ってからにするんだな。なぜかって?彼はギャングスタのなんたるかを心得ているからだ。」

 

 

一応こんな感じの翻訳になるかと思います。ちなみにTookieとはStanley Williams IIIという実在した社会運動家(ノーベル平和賞ノミネートまでしていた)でありながら、ギャングスタだったという人物でして、青を基調としたギャング集団「Crips」を拡大したことで知られています。The Gameは元々Cripsの縄張りで生まれ育ったため、先のTookieにリスペクトを示す目的もあり、引用してきたとも考えられます。

 

そもそもこの記事を書くに至った理由としてベンは、これまで誰もスタートアップの世界で会社をどうやって作っていくか?、またその際に犯してしまう失敗についての重要なことを書いたり、喋ったりする人がいなかったからだと説明しています。つまり、スタートアップの世界の人たちは、他人の成功を見てきて「会社の(は)なんたるか」を知っているつもりでいるけれども、それはアル・パチーノやロバート・デ・ニーロがマフィアを演じているように、本当にわかっているとはいえない。けど、僕(ベン)はそれをきちんとわかってる、つまりTookieのように、当事者としてこれまで会社を立ち上げ、運営をこなし、様々なことを経験してきた。だから、この記事が書けるんだということを説明しています。

 

 

 

さらに記事中では「California Sunshine」という曲のリリックも引用して、投資家ロン・コンウェイを説明しています。

 

 

 

 

If you slipping in hollywood and you get your chain snatched

I know some ni*%$s who owe some ni*$%s, I’ll get your chain back

 

翻訳

「もしお前がハリウッドにいて、高いネックレス(チェーン)を身に付けていると、ひったくられるぞ。けど、俺は仲間を知っているから、そのネックレスを奪い返してやることができる。」

 

 

ここでのハリウッドは前述したLAX Filesからつながっていると考えられ、ハリウッドにいて映画スターを真似して調子に乗ってブリンブリンのネックレスなんて身に付けているフェイクな奴、そんな奴こそネックレスをひったくられる。つまり会社を立ち上げる際に問題を起こしたり、足元すくわれたりするぞということを意味しています。

The Gameがここで言う仲間とはギャング集団「Bloods」のことを示していまして、赤を基調としたギャングとして有名です。ちなみにTookieの箇所で紹介した「Crips」は対抗勢力にあたります。このリリックからわかることは、なにか問題が起こった場合、The Gameには仲間がいるため、問題事に対処できる人材を熟知しているというメッセージが込められています。ベンはThe Gameのような能力を持った人物としてロン・コンウェイをあげ、困難に対面した際になにをやればいいのか熟知していて、頼れる存在としてなぞらえています。

 

 

このように表現したいことがあるけれど、自分ではなんだかうまく表現する方法がみつからないという時。その際に、ヒップホップのリリックが自分の伝えたいことや感情を表現する方法としてとてもぴったりだということをベンは思いつき、引用するようになりました。

 

 

最後に個人的に思ったことですが、ヒップホップのリリックの引用なくして本書は成り立たないのではないでしょうか。なにが言いたいかといいますと、リリック部分が削られているということは大きな彼の精神的な部分が本書からなくなってしまっていることと同意義なのではないかということです。そう考えると不安で夜も眠れません。

 

 

 

One more things…

今回の記事を読んでヒップホップのリリックに興味を持っていただいた方!

More Than Noise

しょたぞブログ

RAq a.k.a. REEZYというラッパー

上記のブログもぜひチェックしてみてください。よりディープなヒップホップリリックの世界を堪能していただけます。

 

 

さて、次回は翻訳版にあるベン・ホロウィッツの写真の秘密についてふれてみたいと思います。

お楽しみに。

 

 

アイキャッチ:Medgar EversCollege (Flickr)

ライター:湯浅 拓

 

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