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相談のススメ【理論編】〜岡田斗司夫『オタクの息子に悩んでます』をテキストに〜

27/11/2014

 

「相談のススメ」。

このタイトルを見て、「何か悩みがあるときはすぐ家族や友人、恋人などに相談することが大事!

決して悩みを自分一人で抱え込んじゃダメ!」みたいな内容を想像した人も多いかもしれない。

だが、今回ご提案させていただくのはそういうことではない。

悩みを抱えた人たちの相談に率先して乗る。

これが今回のポイントだ。

 

「相談する側」ではなく、「相談される側」になる。

そうすることで、問題に対する考え方が身につき、自分の悩みに対処する力もつく。

論理的思考力や、相談の行間を読んでより深く物事を考える力も身につくだろう。

「相談に乗る」ということは「考える力」を総合的に養うための格好の手段なのだ。

 

朝日新聞土曜別刷りbeにて「悩みのるつぼ」という人生相談コーナーが連載されている。

ここでは4人の回答者が持ち回りで読者から寄せられたさまざまな悩みに回答しているのだが、

そのひとりに作家で「オタキング」の岡田斗司夫氏がいる。

岡田氏の回答は論理的で合理的かつ現実的、それでいて相談者への優しさにあふれ、

なおかつ発想の面白いものが多い。

 

そんな岡田氏の回答が好評を博してか、

2012年には、どのように相談に回答しているのか、自身の思考プロセスをつまびらかにした

オタクの息子に悩んでます――朝日新聞「悩みのるつぼ」より』(幻冬舎)を出版している。

今回は本書をテキストに、あらゆる相談に答えていくための思考法を紹介しよう。

なお以下では、相談が文章で寄せられたものであることを想定している。

 

 

相談に答えるための「思考ツール」3選

 

分析

 

相談に答えるためには「証拠を求めながら相談を読み込む」分析の作業が重要だ。

相談文を書くのはほとんどが文章の素人だ。仮に「◯◯するにはどうすればいいでしょうか?」

と結んであったとしても、相談者が本当に聞きたいポイントはそこではないかもしれない。

 

自分の頭の中でいろいろな思いが複雑に絡み合ってしまっているからこそ、

悩みが当人の中で深刻化してしまう。それを短い文面の中で的確に表せているはずがない。

相談者に寄り添うことは大事だが、書かれている文章を常に疑いながら分析することが求められる。

 

仕分け

 

相談文を分析したら具体的な解決法をすぐに探りたくなるものだが、焦ってはいけない。

悩みを「解決できるもの」と「解決できないもの」、「緊急を要するもの」と「緊急でないもの」、

「自分自身の問題」と「他人の問題」などに次々と細分化していく作業が必要だ。

これが「仕分け」である。がんじがらめになった悩みを解きほぐしていくための作業だ。

 

「誰がやっても解決できないもの」や「とりあえず緊急でないもの」、

「自分ではどうしようもない他人の問題」は一旦忘れて、頭の負荷をできるだけ減らしていく。

そうすることで、目の前の解決可能な問題にのみ集中することができ、視界がクリアになるのだ。

 

共感と立場

 

岡田氏は回答に際して、「相談者と同じ温度の風呂に入る」ことを心がけているという。

相談される立場にある人間は、どうしても相談内容に対して「それなら◯◯だから××すればいい」

と理詰めで解決しようとしてしまう。結論を急ぎすぎるのだ。

そうではなく「同じ温度の風呂」に入って、その人が冷たいと感じているのか、熱いと感じているのか、

どんな温度の風呂に入っているのかを考えて「同じ気持ち」になることが重要だ。これが「共感」である。

これがなければ、こちらの言葉は安全圏から放たれた上から目線のものでしかなくなる。

 

「立場」とは、岡田氏いわく、徹底的に相談者の味方になることだ。

「こいつはなんでこんなことで悩んでるんだ?」という立場からものを言ってはいけない。

100人中99人がそう思うような相談でも、自分は相談者の味方になる。

そういう意識で相談文を読むと、より相談者の悩みの本質に深く入り込むことができる。

 

 

ということで、相談に答えるための3つの思考ツールを紹介したが、

これらは岡田氏が提唱する11の思考ツールの一部にすぎない。

残り9つには「潜行」「アナロジー」「メーター」「ピラミッド」「四分類」

「三価値」「思考フレームの拡大」「フォーカス」といったものがある。

これらの中身が気になる方はぜひ本書を読んでほしい。
 

 

実際に寄せられた相談と回答を見てみよう

 

それでは、実際に朝日新聞「悩みのるつぼ」に掲載された相談と岡田氏の回答を見てみよう。

今回取り上げるのは今年10月25日に掲載され、SNS上でも評判の高かったものだ。

普段寄せられるものと比べても重い内容の相談だが、岡田氏の回答を読む前に、

自分ならどんな回答をするか考えてから読んでほしい(下記のリンクから相談と回答の全文が閲覧できます)。

 

【悩みのるつぼ】自殺した父に向き合いたい 回答編(別ウィンドウで開きます)

 

相談文を初めから見ていこう。「分析」の作業だ。

まず注目すべきは冒頭、「28歳の独身女性です。父親を高校1年生のときに自殺で亡くしました」という記述。

高校1年生であれば当時15〜16歳。すでに12年は経っている。

12年という年月が経過していながら、いまだ相談者を苦しめている父の死。

この点はしっかり頭に入れながら読み進めるべきだ。

 

そして、続きを読み進めていくと、おそらく岡田氏が今回最も注目したであろう一文が登場する。

 

「父親の自殺は自分にとって大きなショックでしたが、私以上に強い悲しみを抱いているであろう母親の前で涙を流すことができませんでした」

 

この一文が今回の相談文中、最大のポイントとなる。

相談者は父親が大好きだった。しかし、これまで友人や恋人にも父親の自殺を隠してきた。

それはどこか父親の死に方を軽蔑しているからではないかと相談者自身も悩んでいる。

本当は自殺した父親を許せない気持ちもあるが、その感情をこれまで押し殺してしまっていたのだろう。

その理由の一端を、岡田氏はこの一文に見出したのだ。

それは「隣にいるお母さんをもっと悲しませることになるから」。

相談者は、自分の感情を無意識に封印してしまうほど母親想いだった。

 

そこで岡田氏は「父親の死との向き合い方」ではなく、

「残された母親との向き合い方」を提示することにした。

これは「分析」の結果導き出した「仕分け」に分類されるだろう。

 

相談者が欲していたのは、「父親の死との向き合い方」であったが、

これを直接解決することは一筋縄ではいかない。

12年も相談者が苦しんだことを、1000字弱のお悩み相談コーナーで解決できるはずがない。

だが、相談文を分析した結果、相談者を本当に苦しめていたのは、

残された母親への想いからくるものであった。

「残された母親との向き合い方」にこそ、解決の可能性があったのだ。

 

回答文の「母の前で泣かなかったあなたは、もう充分すぎるほど親孝行しました。

10年以上、恨み言を言わなかったあなたは、死んだ父にも充分以上の供養をしたんです」などは、

「共感と立場」の最たる例だろう。これまでの相談者の振る舞いを肯定し、

その上で前進を促す記述になっている。

 

 

悩み相談の回答に正解はない。

それはあくまでも相談文から類推された結果にすぎない。

だが、文章を一読するだけでは思いもしなかったことがふと浮かび、

悩みの本質が見えてくる瞬間がある。

その感覚を大事にしながら、相談に乗っていってほしい。

 

 

おわりに

 

良い相談をするためには良い回答に触れることが重要だ。

その際、必ず自分ならどう回答するか考えること。

その後に実際の回答に触れ、自分にはなかった視点・考え方に数多く触れてほしい。

 

個人的に相談の白眉だと感じるのは、今回取り上げた朝日新聞「悩みのるつぼ」の岡田斗司夫氏担当回や、

iPhone女子部のWebサイトで連載されているライムスター宇多丸の「女子限定!お悩み相談室」

TBSラジオで毎週土曜19時から放送中の『週末お悩み解消系ラジオ ジェーン・スー相談は踊る』だ。

三者とも相談内容をよく分析し、相談者に寄り添った回答を打ち出している。おすすめだ。

 

いざ実際に自分で相談に答えていくのであれば、

「Yahoo!知恵袋」や「教えて!goo」などのサービスに寄せられる相談に回答すればいい。

「ベストアンサー」などという形で自分の回答に対する評価もはっきりと示される。

 

そこで、次週は今回学んだ「思考ツール」をフル活用して、

ライターの私が自ら「Yahoo!知恵袋」に寄せられた相談に回答する「実践編」をお送りする。

まだ相談には回答していないので次週の記事がどうなるか、はっきり言って不安でしかない。

誰かに相談したいくらいである。

だが、全身全霊で精一杯の愛をこめて相談者と対峙するつもりだ。

いったいどんな結末をたどるのか。お楽しみに。

 

 

(ライター・倉住亮多

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