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「アイスバケットチャレンジ」から見るソーシャルグッド運動

20/08/2014

湯浅です。完全に夏休みボケしています。ホント駄目ですね。

目を覚ますというか、頭を切り替えるために氷水でもかぶる必要があると思っております。




ところで、僕は813日にこんなツイートを残しています。





きっかけは偶然だった

 

僕がツイートするきっかけとなったのは、ある映像を見たことでした。それは、instagramで偶然見かけた、ハリウッド女優のJamie Chungが頭から氷水をかぶるという映像と、The Tonight Show Starring Jimmy Fallonというアメリカのバラエティ番組で同じように大勢の出演者が頭から氷水をかぶっている映像を見て、一体これは二組ともなにをしているんだろうという疑問からでした。

(どうしてこんな発見の仕方なのかとお思いの方へ。僕はジェイミー・チャンが映画「ハングオーバー」以来好きな女優で、彼女のinstagramをフォローしていたからです。あとThe Tonight Show Starring Jimmy FallonThe Rootsが音楽担当でHipHop好きの僕はテンションが上がりまして、さらにJustin Timberlakeとの”History of Rap”の影響から好きになった番組なのです。)





では、なぜ大勢の人びとが頭から氷水をかぶっているのでしょう?


これはアメリカのALSA(Amyotrophic lateral sclerosis Association)という協会が筋萎縮性側索硬化症(ALS)について広く知ってもらい、闘病を支援する目的で始まりました。チャレンジャーは頭から氷水をかぶり、次のチャレンジャーとして3人の友人を指名します。指名された人は同様に氷水をかぶるか、ALS協会に100ドルを寄付しなければなりません。


ところで、氷水をかぶることとALSの症状との関係は全くないのではないかとだれしもが考えるのではないでしょうか。なぜ、氷水を被ることになったのか?という僕の予想を少し。このアイスバケットチャレンジを始めたのはNFLの選手です。NFLではスーパーボールで勝利(優勝)した監督がキンキンに冷えたスポーツドリンクを思いっきりぶっかけられる「スポーツドリンクシャワー」または「ゲータレードシャワー」があります。ここから着想を得て、今回のアイスバケットチャレンジになったのではないかと踏んでおります。もう一度言いますが、あくまで予想です。

 

影響は拡大、日本へも


この運動は瞬く間に広がり、海外のスポーツ選手やハリウッドスター、はたまたマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏といった財界の大物など幅広い著名人が氷水を頭からかぶる動画をアップし、影響力が拡大しています。





この運動は日本へも上陸しました。認定NPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹さんがこのアイスバケットチャレンジを行っています。その他にもFacebookで多数の日本の方々がアイスバケットチャレンジを行っている動画を、ここ数日で多く見かけるようになってきました。



上記した「氷水をかぶれば寄付はしなくていい」というルールだとみんな寄付はしてないの?と思われる方がいるかもしれません。ところがどっこい、18日現在ALSAへの寄付金額は1560万ドル(16億円)に上り、前年同期の180万ドル(1.8億円)とはケタ違いの寄付金額になっています。




ソーシャルグッドな運動とメディア

 

ここまでアイスバケットチャレンジを見てきましたが、ここからはインターネット発の社会運動全体を俯瞰して、ソーシャルグッド運動を見ていきたいと思います。その前に、ソーシャルグッド運動とは、社会貢献に類する活動を支援・促進するソーシャルサービスの総称、または、そうしたサービスを通じて社会貢献活動を促進する取り組みのことであるとされています。(出典:IT用語辞典)アイスバケットチャレンジのような、公共に資するソーシャルグッド運動は昨今、非常に多く見られます。例えば、アーティストであるPharrell Williamsの「Happy」のMusicVideo(MV)が世界的に広がり、多くの人がMVを真似するという例があげられます。紛争地域や台風後のフィリピンで踊られたり、日本でも原宿版や東京版が作られたりしました。


また、#BringBackOurGirlというハッシュタグも注目されました。これは、ナイジェリアの過激派組織に拉致された女子生徒を返してほしいという目的から、オバマ大統領夫人のミシェルさんや、2012年にイスラム武装勢力タリバンから頭部に銃撃を受けて重傷を負ったマララ・ユスフザイさんら著名人がハブとなり、ハッシュタグ付きツイートを拡散させました。


ふたつを比較すると、HappyMVパロディの場合、目的はただHappyになりたい。また、「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」といったところでしょうか。つまりは、みんな楽しいから踊っていると。普段とは違ったことをやることで、いつもの日常を少し変えてみる試みと言えるかもしれません。少し前にあった職場で、とある音楽が流れ始めると、そこで静かに仕事をしていた人たちが突然ハイになって踊りだす動画として話題をよんだハーレムシェイクも同じようなものでしょう。


もう片方の#BringBackOurGirlの運動は、拉致された女子生徒を返してほしいという明確な目的があります。今回のALSのアイスバケットチャレンジも同じようにワンイシュー、ひとつの解決すべき課題に多くの人が共感し、ソーシャルグッドなムーブメントが広がる。尚且つそれは難しいものではなく、ほんの数十秒、氷水をかぶる動画を撮るといういたってシンプルなものです。


前者はHappyになりたいというシンプルなものながらも、目的が曖昧なため運動として盛り上げるには難しい、むしろファレルの歌がなければ起こりえなかったものでしょう。しかし、後者はワンイシューが明確ですし、方法を変えれば他の課題にも応用できるかと思います。そこに必要な要素は、シンプルだけど普通はやらない面白いことを、ハブになる著名な人に届け、その著名人がさらに発信するといったところでしょうか。


ただ、バズる運動バズらない運動は往々にしてあります。これはアプローチの仕方が悪かったり、シンプルだけど普通はやらない面白いところが世間にうまく合致しなかったりするからではないかと思います。これは、トライアンドエラーでやってみないと当たるも八卦当たらぬも八卦ということでしょう。必要な要素は明確に見え、かつ簡単そうですが、非常に難しいことが明確です。非常に難しいと考えるのは、量的なシェアの数や寄付金額だけでなく、質的にメッセージや寄付が届くべき人に届いたのか?、援助されたのか?、はたまた、心に訴えかけるものであったのか?ということが、すぐにはわかないからです。さらに、これが簡単であるというのであれば、マーケティングというものは存在しないでしょう。


また、ある情報がネットで拡散している理由を、SNSの力だけだと思ってしまいがちになってしまうことが近頃多くなっているような気がします。しかし、実際はそこには常に大なり小なりのメディアが介在していることでしょう。比較的アクティブなネットユーザーに対して運動を認知させるにはSNSで十分ですが、もう一段階上のマスに対して認知させるには、やはりマスメディアの存在が重要になっているのは既に周知のことかと思います。うまくネット上でバズらせておきながら、同時に一般的事象に結びつけるようなマス要素を入れるなり、マスメディアに認知させることが情報の道作りであることには今後もあまり変わりはないのかなと感じています。はっきり言って、ここも常に模索する箇所であり、完璧な答えなどないのでしょう。もちろん、これまで起きた運動の成功事例から成功に必要な要素を細かく分析していくことで運動をバズらせる確率を上げることはできるのやもしれません。




ソーシャルグッドとジャーナリズム

 

さらに、ソーシャルグッドなことをジャーナリズム分野でやることはできないだろうかと考えてみました。しかし、ジャーナリズムはワンイシューではないですし、多様な意見が介在しています。多様な意見があることそのものがジャーナリズムにとって大切ですが、「イシュー」と「意見」は違うので、純粋に「イシューの拡散」という意味でのソーシャルグッド運動はジャーナリズムの一環にはなり得るのかもしれません。この話はジャーナリストはアクティビストであっていいのか?という最近の議論に通づるものがあると思っています。


このあたりの動員に関することは、津田大介さんの著作『動員の革命』に、より詳しいことが記載されているはずなので、ぜひ御覧ください。また、最近発売した田端信太郎さんの著作『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』には、人数に応じた動員の基本的なパターンなどが記載されているので、こちらもぜひ合わせてお読みいただければと思います。




まとめ

 

まとまりがなくなってしまいましたが、発信者は成功したであろう多数のソーシャルグッド運動の事例の詳細な分析から成功に必要な要因を挙げることで前述した量的な成功と質的な成功の確率をできるだけ上げていき、メディアがハブとして情報を仲介することでバズる仕掛けや届くべき人に届くパブリッシュを行い、ジャーナリズムはそれをゼロイチで捉えずに注視すること。また、動員も常にいろんなフェーズで考えねばいけないですし、一緒くたに考えることはできないでしょう。以上が僕なりの考えでありました。

 

追記

書いてる間にこのような記事やツイートが。


氷水を頭からかぶったって、本当にそれが支援になるのか(The Huffington Post)


 

 

 

 

(アイキャッチ:Wikipedia)

(ライター:ユアサ)

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