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本当に「大義は無い」?解散をめぐる批判についての疑問

21/11/2014

 

急展開だった。

首相がAPEC首脳会議で中国訪問中、唐突に与野党で「解散」の憶測が湧いたかと思うと、メディアで「解散風」の言葉が躍りはじめ、議員たちは選挙準備にあわてだした。そのまま11月18日に安倍首相が解散を宣言。新聞各紙が解散の観測を書きだしたのが11月5日前後だから、約2週間のことだった。

 

その間、いや解散が決まった後も、「解散には大義がない」との批判が野党、党内、一部メディアやSNSでみられた。そうした批判と安倍首相の会見をみて、筆者が感じた疑問がある。

 

それは、「今回の解散には本当に『大義』がないのか」ということだ。

 

今回の記事では、その疑問をまとめておきたい。

 

 

 

「大義がない」批判

 

首相が解散を宣言する以前、「大義がない」批判は様々な方面から寄せられていた。

財界人から「何のために選挙をするのか意味がわからない」「(再増税を)延期するなら粛々とやればいい。選挙より政策を」と、維新の党・江田代表からは「約束をほごにした解散・総選挙は、大義がない」と指摘されている(朝日新聞11月13日│(時時刻刻)解散の大義、どこに 消費増税、先送り繰り返す懸念)。
また自民党岐阜県連は15日に解散・総選挙を決議、「消費税への対応を解散の大義名分とするのは後付けで民意軽視」とした(毎日新聞11月15日│「年内総選挙は異常、大義もない」決議)。

 

解散が明らかになった後も批判は続く。

 

経済ジャーナリストの荻原博子さんは「解散は必要ない」と言い切る。消費増税法には、景気が想定以上に悪くなれば増税の先送りやとりやめができる「景気条項」があるからだ。「法律に基づいて増税を先送りすれば良いのに」
財務省出身で税制に詳しい森信茂樹・中央大法科大学院教授(税法)は「増税するなら解散すべきだが、先送りは解散の大義にならない」と話す。「増税を先送りするなら、社会保障も先延ばしするということも具体的に示して国民の判断を仰ぐべきだ」

(出典:朝日新聞11月20日│(2014衆院選)問われる、費用700億円 解散理由に賛否

 

なるほど、解散が「増税を先送るか否か」を問うためにあるなら、たしかに大義があるとは言い難い。記事にあるように、解散しなくとも増税先送りは可能だからだ。
そしてこの意見、わざわざ記事本文を引用したが、これは解散に否定的な多くの人が持っている意見なのではないだろうか。そういう印象が筆者の肌感覚としてある。

 

だが、18日の安倍首相の会見を見てみると、首相が争点にしているのは「増税先送り」の是非だけではない。

会見を見てみよう。

 

 

首相が会見で示した解散の理由

 

 

 

安倍首相は会見で、GDPの速報値悪化を受けて、(1)来年10月に予定されている消費増税を18ヶ月先送ること(2)18カ月後の2017年4月には確実に増税を実施することを明言した。延期は税制抜本改革法(2012年8月)の付則にある、増税の判断には経済情勢を考慮すると定めた景気条項に則った判断だという。

そのうえで、その判断の是非を国民に問うため、衆議院を解散・総選挙を行うとした。
なぜ今なのか。安倍首相は「来年度予算に遅滞をもたらさないぎりぎりのタイミング」としている。

 

以上は会見の内容だが、この内容を、舞台裏についての報道を踏まえて少し考えてみよう。

 

 

なぜ今なのか、なぜ解散か

 

まず、「なぜ今なのか」ということについて。

従来の選挙でもそうだったように、増税論議とセットになった総選挙では政権が勝つのは難しい。したがって、支持率の推移をみすえた解散のタイミングが非常に重要になってくる。無論タイミングというのは、選挙に勝てるタイミングのことだ。

今回の場合は、政権にダメージが少ないタイミングとして年内選挙実施の話が持ち上がったようだ。11日の朝日新聞に掲載された公明党幹部の発言によれば、「来年は増税のほか、原発再稼働、集団的自衛権の行使容認を踏まえた安全保障法制論議もあり、政権にとって厳しい年」という。今の時期が一番ダメージが小さいのだ。また、野党の選挙準備が整っていないうちに解散に踏み切ったとの思惑もあったとの報道がある。(参考:読売新聞│11月19日<上>長期政権にらみ決断 など)

他にも様々な憶測が飛び交ったようだが、ここに挙げたものが解散を急いだ理由としては(狡猾だが)もっとも合理的であったように思われる。

 

公明党幹部の発言から読み取れるもうひとつのことは、消費増税を実施する際には政権支持率低下が避けられない、ということだ。実際、朝日新聞が8,9日に実施した世論調査では、来年10月の増税は反対が67%だった。2012年にすでに民自公で3党合意したものとはいえ、こうした状況では増税に踏み切るにはダメージが大きいはずだ。

他方で政治家からすれば、先延ばしが続けば再増税はいつまでも実施できないかもしれない、という危機感もあるだろう。

 

そのことを踏まえて安倍首相の会見を見てみると、どうだろうか。
「解散には大義がない」という批判は、「増税先送り」の是非が解散で問われていると強調する。しかし今回の解散の目的は、政権へのダメージを最低限に抑えながら消費税の再増税を確実に実施することではないか。すると強調すべきは「増税先送り」ではなく、解散が「18カ月後に、いかなる経済情勢であっても確実に増税すること」の是非を問うことにこそあるように思われる。

 

 

再増税自体の是非を改めて問うことは「大義」にならない?

 

「今回の選挙は、2017年4月に増税を断行する、という判断の是非を問うものである」。

こう言われると、解散に「大義」が無いと言い切れない気がしてしまう。新聞主要紙は消費増税自体には概ね賛成を示しているようだが、それは国民が皆賛成しているということではない。8%への増税を受けて、もうこれ以上の増税には反対だとする人もいるだろう。2017年時に「景気情勢を考慮しない」こと自体に反対する人もいるかもしれない。実際、朝日新聞が19日・20日におこなった世論調査によれば、2017年4月の増税には「反対」49%と、「賛成」39%を上回っている。国民レベルでは、「増税断行」の是非が争点になりうるということだ。そのことを踏まえてなお、この選挙に「大義がない」と言えるだろうか。

 

大臣のダブル辞任劇や増税派との折衝など、解散をめぐるゲーム的な攻防が裏で行われていたことは、報道内容のかぎりで承知しているつもりだ。政権からしても、都合の良いタイミングにセットしただけの選挙なのかもしれない。

 

だがやはり、シンプルに会見を見た後に一部報道を見ると、「2017年4月には増税断行」が論点として軽視されすぎではないかと思われる。

先述の世論調査で、朝日新聞は「解散理由について、安倍首相は消費税引き上げ時期を延期することについて、国民に信を問うため、と説明しています。こうした理由で選挙をすることに納得しますか。納得しませんか」と問い、「納得する」25%、「納得しない」65%の結果を得ている。しかし「増税断行」の信を問うことは質問に盛り込まれていない。これでは「増税断行」の論点を無視してしまっているどころか、質問内容があまりに恣意的だと言われても仕方がないのではないだろうか。
このように主に「大義がない」と解散を批判しているのはリベラルとされる新聞だが、かといって保守系の新聞も大義を「アベノミクスの成果を問う」とするだけで、論点としては増税断行にほとんど触れていない。

より国民目線に立てば、首相が「増税断行」を明確にした以上、その是非を問う意義はあるのではないだろうか。

 

解散は今日。来月2日公示、投票は12月14日だ。

いずれにしても選挙することが決まったからには、解散自体を批判しても仕方がない。消費増税はもちろん、様々な論点を出し合って有意義な選挙にしたいところだ。

 

 

(ライター:マチドリ)

アイキャッチ画像出典:photo by pakutaso.com 

 

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