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つぶし合うマスメディアたち…今、マスメディア全体への信頼のために必要なことは?

19/09/2014

 

マスメディア業界が揺れている。揺れまくっている!

 

周知のように、朝日新聞社は今月11日、
1)「吉田調書」報道に、誤った印象を与える内容があったこと
2)「慰安婦報道」で誤報があったことと、訂正が遅きに失したこと
について、会見を開いて謝罪し、該当記事を取り消した。

同社社長・木村伊量氏のおわび記事

 

一部では「朝日の9.11」とも言われるこの会見。
僕は、ある新聞社が自社の報道について、他社からここまで直接追及されているのを初めて見た。

 

よく言われるように、
日本のマスメディアでは、媒体上での相互のやりとりが少ない。
他紙報道からの引用はほとんどないし、相互チェックとなるような他紙への批判も稀だ。

ところが今回は、会見含め、かなり活発に朝日新聞への批判が相次いでいる。

 

報道全体の質の向上のためにも、相互チェックは大いになされるべきだ、
と僕はずっと思ってきた。

「もしかして今回の朝日新聞の一件は、
今後新聞に相互チェックの機能が備わるきっかけになるのでは…!」

そんな期待をしながら、僕は興奮気味に会見を見ていたわけだ。

 

ところが、その後の進展をみてもわかるように、事態はそれとは程遠い。

 

読売新聞と産経新聞が、今回の一件を利用して読者獲得に動いている。
上記ツイートにもあるが、僕がみる限り、このやり方には好意的でない反応が多い。

 

 それどころか、ネット上では「読売・産経も誤報しているじゃないか」という指摘も噴出している。

 

どうやら、産経と読売は「ハシャいでいる」「騒いでいる」と思われているらしい。

したがって、
少なくとも現段階では、「相互チェックが機能している」と思われてはいないのは確かなようだし、

むしろ結果的にはマスメディア全体に対する信頼が低下してさえいるのかもしれない。

 

だとすると、「他紙批判」は報道の質の向上どころか、
全く逆の方向に作用してしまっている!!

 

今回の朝日新聞の一件を経験した上で、
(朝日新聞に限らず)マスメディア全体が信頼を取り戻すには、どうすればいいだろうか。

 

 

他紙批判で重要なこと

 

残念なのは、
いまだにマスメディア各社に「マスメディア」を全体として捉える視点が希薄に思えることだ。

実際のところ、特に保守系とされるマスメディアによる他紙批判の多くは、
「マスメディア全体のため」と意識した内容とは思えない。
感情を煽るような過度な批判や、ただ自社の報道の正統性を訴えるための批判なら、
それはマスメディアの「内輪もめ」と見られ、かえって読者の不信感を生みかねない。

 

 

 

 

当たり前だが、他紙批判で重要なのは、
いかに冷静に、かつ適度に、そして読者のために、
ひいてはマスメディア全体の報道の質向上のために批判できるか、ということだ。

 

そもそも批判は相手に受け入れられるものでなければ意味が無い。
対象となる他紙、そして読者が受け入れることのできる冷静な批判こそ、
他紙が他紙自身の報道を省みる機会になるのであり、
つまりこれが「相互チェックが機能する」状態といえる。
この状態に至ってこそ、他紙批判はマスメディア報道の質の向上につながる。

 

他紙に対する指摘や批判自体は悪いことでは無い。むしろ歓迎すべきだ。
現在の感情的で過度なバッシングを、この「相互チェック」に変えていくことができれば、
それはマスメディアへの信頼の回復にもなるはずだ。

 

 

 

キーマンになりうるか?毎日新聞と東京新聞

 

では、「朝日 vs. 産経・読売」で「部数獲得のため」に内輪もめをする、というような
単純な構図を打開し、有効な相互チェックの気運を高めるにはどうすればいいだろうか。

 

従来から新聞は
朝日・毎日・東京 = リベラル、左翼
読売・産経 = 保守、右翼
として見られることが多いが、この単純な構図をあえて踏まえるなら、
僕は、毎日新聞と東京新聞がキーマンになりうるんじゃないかと思っている。

 

というのも、読売新聞や産経新聞による朝日新聞への批判は、
「右 vs. 左」という構図を補強するばかりだ。
「部数獲得のため」という露骨な下心がさらに混ざれば、
いよいよマスメディア内の内輪もめにしか見えなくなる。

 

今回のように、同じ「左」として見られている毎日新聞と東京新聞が
朝日新聞に対して批判すべきを冷静に批判すれば、凝り固まった「右 vs. 左」の構図がほぐれるのだ。

 

また、朝日新聞が会見で提示した「信頼回復と再生のための委員会」と
第三者委員会の設置や社内改革の推進は、ただちに評価することはできないが、
その進展には期待したいところだ。
しかし、朝日新聞が改革の方向性を示すだけではマスメディアの報道全体の
信頼維持・向上には必ずしもならない。
失態が続いた以上、改革するのは当然だからだ。

 

他方の毎日新聞と東京新聞は今回の件ではあまり注目されていない。
注目されていないからこそ、マスメディアの新たな動きの推進を
担える立場にあるのではないかと(期待を込めて)思うのだ。

 

 

 

おわりに

 

最後に、ここまでの内容をまとめつつ、
もう少しだけ具体的なアイディアを出しておきたい。

 

先述のように、
マスメディア間において感情的で過度なバッシングが繰り返される現状では、
マスメディア全体への信頼が低下しかねない。
ただ、他紙に対して指摘・批判をする動き自体はむしろ歓迎すべきだ。
マスメディアがその信頼を取り戻すには、
バッシングを冷静で適度な他紙チェックに変えていき、
これを今後も継続させていくことが有効なのではないか。
そしてその推進のキーマンになりうるのは、おそらく毎日新聞と東京新聞だ。

 

仮に他紙へのチェックを新たな取り組みとして始めるならば、
「マスメディア全体の信頼と質向上のため」と明確に打ち出すことが大切だ。
「つぶし合い」が目立っているからこそ、中立的で建設的な姿勢を示すことは重要なのだ。

 

ただし、単に「他紙チェックはじめました」では、「オマエはどうなんだ」という話なので、
今回の朝日新聞の「人のふり見て…」ということで、自社チェック体制を見直し、
自社報道の信頼をより強く担保する新たな試みを考えるのも大切だろう。

実際に、朝日新聞は既に第三者による委員会や審議会をもっていたのに、問題は起きたのだから。

 

 

以上アイディアをあげてみたが、
もしかしたら新聞社の内部事情を知らないからこそ言えるものかもしれない。

とはいえ、いずれにしても毎日新聞と東京新聞にとって新しいことを始めるのに
今ほどの好機も無いのではないかと思う。

 

 

改めて言えば、報道への信頼低下は、朝日新聞だけでなくマスメディア全体の問題だ。
今後どの社からどういう新しい動きがあるにせよ、
僕はそれが「マスメディア全体」のためのものであることを期待したい。

 

 

 

 

(ライター:マチドリ)
(アイキャッチイメージ:今月12日朝刊各紙。朝日新聞は東京本社13版、他は西部本社14版、産経新聞は九州・山口特別版)

 

 

 

リファレンス

 

「朝日の『慰安婦問題報道』が浮き彫りにしたメディアの相互チェック機能の欠如」│現代ビジネス│牧野洋の『メディア批評』

「吉田調書」を正しく読み解くための3つの前提「朝日 vs. 産経」では事故の本質は見えてこない——社会学者・開沼博|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン

「朝日謝罪会見でハシャぐ読売、産経の“トンデモ誤報”集」│LITERA

 

 

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