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Online Journalism = story+web skill+multimedia

01/10/2014

 

湯浅です。毎日「英語から逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ」と独り言をつぶやいております。独り言を言っていたら、察していただければと思います。

 

さて、今回は9月27日に発表された2014年Online Journalism Awardsを取り扱ってみたいと思います。すべてを取り上げたいところですが、今回は筆者自身がジャーナリズムスクールの学生でもありますので、student部門に限ってみて、考察したことを取り上げたいと思います。

 

Online Journalism Awardsって?

世界中の素晴らしいデジタルジャーナリズムに栄誉を与えることを目的として、2000年5月にスタート。
33の部門によって構成(受賞対象が無い場合もあり)。
本年度はSeattle TimesやProPublica, NPRなどの複数受賞が目立っている。

このアワードは
世界最大のOnline Journalism 組織であるOnline News Association(ONA)によって運営されている。彼らの使命は、より良い公共性を追求するジャーナリストの間において、技術革新(innovation)と卓越性(excellence)を呼び起こすことである。また、本アワードは多くの基金(foundation)によって成り立っている。
受賞作リスト

 

student部門受賞三作

次に学生が受賞した調査報道3つを取り上げたいと思います。
翻訳した紹介文を読みながら、是非実際に作品を御覧ください。
リンクはタイトル部分に貼ってあります。

 

News 21: Back Home -Veterans Come Home to Unprepared Nation-

by Walter Cronkite School of Journalism and Mass Communication at Arizona State University
Student Projects, Large部門

img via news21

img via news21

アフガニスタンやイラクでの活動に従事した260万人を越える退役軍人が祖国アメリカへ戻ってきたものの、彼らを迎え入れる準備が広い地域で満足にされていなかった。退役軍人の多くが生涯患うことになる病気を抱えていたり、障害を負って戻ってきた。そのような障害を抱えた際にしっかりとした援助が約束されていたはずなのに、援助をきちんと受けることができず、その苦悩を抱えて暮らしてきた。彼らを戦争に送った政府(共和党と民主党両政権)の責任として、議会が退役軍人の支援を要求するも、多くのレベルでその援助を施す義務がしっかり果たされていないことが明らかになった。このことをNews21という報道機関が学生と共に調査、報道。

 

下にスクロールしていくと、印象的な写真がまず目に入る。さらに下にいくと、記事の中で退役軍人へのインタビューが見れるようになっていたり、インタラクティブなビジュアライゼーションに飛ぶこともできるような仕掛けになっている。これらがストーリーを補完する役割を担っている。さらに、負傷退役軍人の写真は大きな印象を残す。

 

12の大学から集まった26人のジャーナリズム専攻の学生と11人のNews21スタッフ(編集者、デザイン編集者、データ編集者、ディベロッパーなど)によってチームが構成されている。学生はマルチエキスパートからアドバイスを聴き、負傷退役軍人へインタビューを敢行したり、調査を行ったりした。そのインタビュー数は60の市・20の州を飛び回って何百人にも上り、公になっている記録や政府レポートは数万にも及んだ。また、特別給付金やバックログデータを退役軍人省から、慈善基金(charitable financial)のデータを国税庁から、自殺者数や死亡者数のデータを国中から集めて分析した。彼らの最も意欲的な努力は各州の健康状態データから、報告された退役軍人の自殺について収集・整理・分析したことであった。(紹介より)


 

What is Home?

by University of Miami
Student Projects, Small部門

img via searching for home

img via searching for home

アパルトヘイトから20年経った南アフリカにおける居住区の住宅問題を調査報道。
1994年、政府は全国民が2014年までには「きちんとした」家に住めることを目指すと公約し、Shackと呼ばれるインフラの無いバラック建ての家からの脱却を目指していた。しかし、それは2014年現在叶うことはなく、220万人が未だに「きちんとした」家に住めていない状況にある。

 

ビデオプロデューサーであるジャーナリストによる調査報道なので、トレーラーからスタート。非常に簡潔かつ映像の持つインパクトで概要が説明される。さらに、多くのインタビュー動画が各所に埋め込まれている。個々に視点を当てることで、より問題の深刻さを浮き彫りにすることができている。

 

Aubrey Aden-Buieによる取材。彼女はマルチメディアジャーナリストであり、ビデオプロデューサーでもある。マイアミ大学大学院マスター(まもなく修了とのこと)(紹介より)

 

Return to Elwha 

by University of California, Berkeley Graduate School of Journalism
Student Projects, Small部門

img via RETURN TO ELWHA

img via RETURN TO ELWHA

アメリカ、ワシントン州のオリンピックパークを源流として流れる川がElwhaだ。Elwhaにはかつて鮭が生息していた。
その後、経済発展にともなって水力発電のためのダムがElwhaに建設された。ダムが原因となり、鮭が住めない川になってしまった。鮭は生態系における種のkeystoneである。なぜなら、鮭は海から生態系に不可欠な栄養分を運んできているからだ。1960年代より環境団体の精力的な訴えによって、1992年、議会はついにElwhaを復元する決定を下した。3億2500万ドルの費用をかけ復元プロジェクトはスタートし、2012年夏、Elwhaダムはついになくなり、2014春にはGlines Canyon Damもなくなった。2012年8月、Elwhaを調査してみると、複数種の鮭がElwhaに戻ってきたことが確認された。

 

過去の白黒写真やElwhaのダムを解体し、川を復元する過程を画像でつなぎ合わせ、下スクロールをしていくことで作業工程がわかるようにした仕掛けは写真をうまくインフォグラフィックとして使っている例だと感じた。パート3にある源流から河口までの道筋はまさにSnow Fallの雪山ルートを彷彿とさせるものであって、より体験している雰囲気をリアルに感じることができるのではないだろうか。

 

Elwhaと鮭に関することに触れていた新聞記事がすべての始まりであった。映画製作者であるJason JaacksはElwhaに幾度と無く訪れ、部族の長老や生物学者、漁師にインタビューを重ねてきた。(紹介より)

 
 

ONA2014 student(large/small) 部門全体印象

 

・直感的な掴みとしてはデザイン>ストーリー。デザインで掴めないとストーリーも読まれない。
写真やビジュアライゼーション、動画などで直感的に「これ読みたい」という気持ちをおこさせた上で、ストーリーを展開していく流れに。

 

・パララックス技術を使ったイマーシブ(没入)コンテンツをどこも採用している。
→これを一躍有名にさせたのが、NYTが作成した「Snow Fall」。
2012年の年末に公開したイマーシブ型のマルチメディア特集で、翌年のピュリツアー賞も獲得した。

 

・前述したパララックス技術を使ったイマーシブコンテンツによってインターネット向けコンテンツを意識していることはもちろんである。
が、旧来の文章表現、動画撮影、写真などももちろん盛り込まれている。これはすなわちOnline Journalism は究極のマルチメディアではないだろうか。
むしろ、Online Journalism において、ビデオジャーナリズムやフォトジャーナリズムなどスペシャライズされた存在など無いのかもしれない。
というよりも、ユニコーン(なんでもできる超人)になることは難しいので、各々が違う能力を持ったチームで挑むべきということにつながるのではないか。

 

Online Journalism は三層構造。
ストーリーが全体のベース(生地)
になっている。
デザイン、写真、動画、ビジュアライゼーション、データはストーリーを相互補完し合う。
それらの要素を纏うことによって、ストーリーがベースから成熟したものになる。
こうして、マルチメディアなオンライン上におけるジャーナリズムを成立させることができる。

 

 

以上。
いかがだったでしょうか?
主に全体印象にまとめたあたりがOnline Journalism の世相というかトレンドを反映しているところのまとめとして読んでいただければと思います。
また、今後、このような世界のメディア状況を踏まえて、改めて日本のメディアをウォッチしていきたいです。


世界のJ-School学生の奮闘を見ると、襟が正される思いであります。
世界を知ることで、重要なエッセンスを自分の研究に盛り込んでいきたいです。

 

(※筆者の英語力が拙いところあるかもしれないので、なにか間違いなどありましたら、ご連絡頂けると幸いであります。)

アイキャッチ画像:ONA Facebook Pageより

ライター:湯浅

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