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「怖さ」と「おかしさ」が同居する傑作『ゴーン・ガール』

18/12/2014

 

※本記事にはネタバレが含まれます。

 

『セブン』『ファイト・クラブ』『ソーシャル・ネットワーク』などの傑作を手掛けた、

鬼才デヴィッド・フィンチャー監督の最新作『ゴーン・ガール』が、去る12月12日に日本国内で封切られた。

 

デヴィッド・フィンチャーといえば、同じく現在公開中の『インターステラー』の監督、

クリストファー・ノーランと並んで、最新作が公開されるたびに映画ファンからの熱い視線が注がれる、

いま最も注目すべき映画監督の一人である。

 

原作はギリアン・フリンのミステリー小説。

全米で600万冊以上を売り上げた大ベストセラーだ。

結婚記念日の朝、突如として姿を消す妻と、

メディアを巻き込みながら妻の捜索に奔走する夫の姿が描かれる。

 

 

あらすじ

結婚5周年の記念日。誰もが羨むような幸せな結婚生活を送っていたニックとエイミーの夫婦の日常が破綻する。エイミーが突然姿を消したのだ。リビングには争った後があり、キッチンからは大量のエイミーの血痕が発見された。警察は他殺と失踪の両方の可能性を探るが、次第にアリバイが不自然な夫ニックへの疑いの目を向けていく。新妻失踪事件によってミズーリ州の田舎町に全米の注目が集まり、暴走するメディアによってカップルの隠された素性が暴かれ、やがて、事件は思いもよらない展開を見せていく。完璧な妻エイミーにいったい何が起きたのか…。

『ゴーン・ガール』公式サイトより)

 

 

実はあらすじまでは本作の序盤に過ぎない。

物語はここから二転三転と怒涛の展開を見せていく。

本作が「ネタバレ厳禁」と言われる所以だ。

 

もしあなたがネタバレを好まないタイプであれば、

間違ってもツイッターで感想を検索するなどしてはいけない。

公式サイトにある著名人コメントもダメだ。

何の注意喚起もされていないが、ネタバレの宝庫である。

そして一番大事なことを言い忘れていたが、この文章も読まない方がいいだろう。

 

とは言ったものの、本作における「衝撃の展開」は、

ミステリー作品としてそこまで衝撃的かと問われればそんなことはない。

物語が進むにつれ、大筋の展開は予想がついてくる。

重要なのは「衝撃の展開」そのものではなく、その描かれ方にあるだろう。

それこそ衝撃である。やっぱりフィンチャーはすごい。

 

 

「怖さ」と「おかしさ」が同居する

 

ネット上の感想を概観すると、

「怖かった」という感想がある一方、「笑った」という正反対の感想も多い。

確かにベン・アフレック演じる夫・ニックのメディアへの対応など、

序盤から笑いの起こり得るシーンは少なくない。

 

だが中盤の展開以降、作品の雰囲気はガラリと変化する。

それまでのサスペンス的緊張感は雲散霧消し、妙な爽快感すら抱かせる内容となる。

そこには予告編で流れるエルビス・コステロの名曲「She」のような雰囲気は微塵もない。

 

ここからはもう完全にコメディである。

ニックがメディアで想定通りの振る舞いをすれば全身で喜びを表現する。

予期せぬトラブルで資金がなくなれば元カレを巧みに誘惑する。

「彼女」の一挙手一投足に恐怖しながらも、その凄まじい執念に思わず笑ってしまう。

 

より口語的に表現するなら「こえええwww」ということになるだろうか。

このあまりにも率直な感想は、本作の「恐怖」と「おかしさ」が同居する感覚そのものだ。

 

 

観客の視点は何処へ

 

本作において、観客がどの登場人物に感情移入したのかという点は興味深い。

夫であるニックの視点で物語は進んでいくものの、

次第に彼自身が抱えていた秘密が明らかになってくる。

そのため、観客の視点は不安定な位置に置いておかざるを得ない。

 

本作では全米が妻・エイミーの失踪事件に注目、ワイドショーでも連日報道される。

強いて言うなら、観客はこのワイドショーを観る視聴者に近い視点で映画を観ることになるのだろう。

 

こうして傍観者を決め込んで油断している観客は後に痛い目に遭うことになる。

特にラストカットは傍観者のはずの観客が、実はそうではないことを突きつけられているようで恐ろしい。

 

 

本作はその内容から、カップルや夫婦では絶対に観に行くべきでないという向きも多い。

だが、個人的にはデートムービーとして最高の一本だと思っている。

観劇後は必ず映画の感想を言い合うこと。

いつの間にかお互いに対する不満をぶちまけ始めているかもしれない。

何事も本音で話せるようになるのが大事。

本作はその手助けをしてくれることだろう。

 

 

うーん、やっぱりやめたほうがいいかも…?

 

 

(ライター・倉住亮多

(アイキャッチ・映画.com

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