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「人生で一番大切なものは何か」をストレートに問う映画 『プロミスト・ランド』

12/09/2014

※本記事は映画『プロミスト・ランド』の内容についての言及を含みます。
まだご覧になっていないという方はご注意ください。

 

 

 

 

ガス・ヴァン・サント監督作品『プロミスト・ランド』(2012年 アメリカ)は、
シェールガスをめぐる資源開発と環境の問題を取り扱いながら、
大手エネルギー企業「グローバル社」のエリートセールスマンである
スティーヴ(マット・デイモン)の人生を描くヒューマン映画だ。

舞台は、良質なシェールガスが地下に眠るとされる田舎町・マッキンリー。
不景気のあおりを受け、農場主など町民は貧困に苦しんでいた。
大手エネルギー会社に勤めるスティーヴは、農場主たちから採掘権を相場より安く買い占めるため、
仕事のパートナーであるスー(フランシス・マクドーマンド)と共にマッキンリーにやってきた。
莫大な利益を生む採掘事業は、当初は歓迎され、採掘権の買い取りも順調に進んだ。

ところが、科学者で高校教師のフランク(ハル・ホルブルック)や
環境活動家のダスティン(ジョン・クラシンスキー)が現れて採掘に反対し、町民の説得に動く。
事業の受け入れの賛否はすぐには決まらず、
数日後に住民投票を行うことになった。

 

事業が、企業の利益になると同時に、町民たちを貧困から救うと確信していたスティーヴは、
地道に説得と採掘権買い取りを続ける。
他方のダスティンは、他地域でのシェールガス採掘時の環境汚染の事例を引き合いに、
看板やチラシで採掘反対とグローバル社に対するネガティブ・キャンペーンを展開。

 

その投票日が迫ってきたある日のこと。
スティーヴは自身の仕事やグローバル社に関する衝撃の事実を知る。
それは彼にとって、事業に対する確信、ひいては同社でエリートの道を歩んできた
彼の人生そのものをも揺るがすものだった…。

 

 

人生の、もっとも根本的な問い

 

 

本作のストーリーはとてもシンプルだ。
終盤に用意された大どんでん返しも、こういってはナンだが、
「一本とられた!」というほどのものではない。
そういう意味では、内容に実験的な仕掛けが無いように思えて、
物足りなさを感じるかもしれない。

 

しかし本作の場合、むしろそのストーリーのシンプルさが良い。
農場主への説得がうまく進まないスティーヴが町のバーで酒を飲んでいると、
そこで目が合った町民に「言いたいことがあるなら言ってみろ」と煽られる。
彼は「金なんだ!」と言う。
金さえあれば、この町での貧しい生活からオサラバできる。
それがなぜ分からないんだ、と。

 

彼が意地汚いからこういう主張をする、というわけでは必ずしもない。
本気で、そして純粋に、お金の強さ・大切さを信じている。
そう思わせるほど、スティーヴには自身の非力さへの悔いがあった。

実際のところ、スティーヴの主張は全て間違っているわけでもない。

 

こうして本作がスティーヴの信念をわかり易く描いているからこそ、
観ていて考えさせられることも実にシンプル。かつストレートだ。

 

「自分は何を信じているか(信じていないか)」「人生で何が大切か」――。
この大きな問いを立てるのに、複雑な仕掛けは必要ないのだ。

 

そして本作はもう一歩踏み込む。
信念を支えているものは何なのか、ということだ。
スティーヴの場合、自身が資産「90億」の会社に勤めていることへの誇りや、
会社からの期待が、彼の拝金主義的な信念を支えていた。
では、その支えを一挙に失ってしまったとき、信念はどうなるか。
つゆと消えてしまわないか。

 

本作を観ていると、そんなことを自分にも当てはめて考えさせられる。

 

 

見どころ

 

印象に残った点は2つある。

 

ひとつは、
作中のところどころ挿入される上空からのカメラワークと、穏やかな音楽。
のどかで田舎らしい雰囲気を際立たせていて、これが心地良い。

 

もうひとつ、スティーヴとダスティンが競って町民の説得する場面では、
双方の汚い下心のようなものが垣間見えて、この演出は巧みだ。
観ていてどちらの主張にも漠然と嫌悪感を抱いてしまう。
おそらく票の獲得競争とは常に汚い一面を持つもので、
それを上手く表現しながら、本作は中立の立場を維持している。

 

 

 

 

 

ストーリーはシンプルだが、
映画全体のゆったりした雰囲気のなかで、人生について考えさせられる。
僕は、これまでの演出方法を覆そうとするような実験的な仕掛けを、
新しい映画に対してついつい期待してしまうのだが、

たまにはこういうのも良いと思う。

 

 

映画は全国50カ所以上の映画館で公開中・公開予定。
詳しくは『プロミスト・ランド』公式ホームページの劇場一覧へ。

 

 

(ライター:マチドリ)
アイキャッチイメージ出典:『プロミスト・ランド』公式Facebookページ

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