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珠玉のアニメーター&アニメーション監督名言集――名作を生み出してきた人物たちから、いまを生きる術を学べ!

25/09/2014

 

クリエイターは「0から1」を生み出す職業だとよく言われる。

映画や音楽、絵画など、心に残る芸術作品を見ると、

クリエイターたちの脳内はいったいどうなっているのかと考えさせられることがよくある。

彼らはどんな思想、考え方でものづくりをしているのだろうか?

 

そんな彼らの考え方を少しでも理解するためには、「言葉」が重要になってくるだろう。

今回はそんなクリエイターの中でも、優れたアニメーションを制作するアニメーター、アニメーション監督たちの口から語られた珠玉の言葉、「名言」を紹介することで、彼らのものの見方、考え方に迫っていきたい。

 

また、今回取り上げる名言の数々は、人選、内容ともに、

筆者独自の観点で選定したものであることをあらかじめご留意いただきたい。

 

 

目 次

庵野 秀明

押井 守

湯浅 政明

細田 守

原 恵一

今 敏

 

 

庵野 秀明 (あんの・ひであき)

――「自分だけがどんなにがんばっても、100点以上のものは出てこない」

 

1960年、山口県宇部市出身。株式会社カラー代表取締役社長。主な監督作品は『トップをねらえ!』(1988年)、『ふしぎの海のナディア』(1990年)、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)など。

 

自分だけがどんなにがんばっても、100点以上のものは出てこないけど、アニメや実写映画は集団作業で、ほかのスタッフの人たちとミックスされたときに一種奇跡のようなことが起きることがある。そういう時には200点にも300点にもなる。(中略)だから、アニメは面白い。それが現場の持つ「場の力」だと思うし、当然、枠にはめていたら、出てこない。

(出典:庵野秀明さんインタビュー(後) 【10年3月特集-春のアニメ祭り!!】 http://www.futoko.org/special/special-24/page0329-639.html

 

アニメの現場に限らず、集団作業が求められる状況は多いだろう。天才・庵野秀明であっても、集団作業、現場の空気を大切にする。一人でずっと悩んでいることが、他者の協力を得ることで一瞬のうちに解決してしまうことは、よくあることなのかもしれない。

 

 

押井 守 (おしい・まもる)

――「映画監督だけでなく、おそらく政治家だろうが、経済人だろうが、まず世の中の期待に応えられなきゃダメなんですね」

 

1951年、東京都大田区出身。主な監督作品に『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)、『機動警察パトレイバー the Movie』(1989年)、『機動警察パトレイバー 2 the Movie』(1993年)、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年)、『イノセンス』(2004年)などがある。

 

映画監督だけでなく、おそらく政治家だろうが、経済人だろうが、まず世の中の期待に応えられなきゃダメなんですね。それをやりながら、10年、20年たった時に本人が貢献しようとした「思想」が見えてくればいい

(出典:【第144回】映画監督、押井守さんから学ぶ「職場を生き抜け!」 | BizCOLLEGE <日経BPnet> http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110112/256900/?P=2

 

「まず世の中の期待に応えられなきゃダメ」という言葉は印象的だ。クリエイターは単純に自分の表現のみを追求しているとみなされがちだが、どんな職業でもプロである以上は世間に広く受け入れられるものを提供していかなければならない。自分らしい表現は後からついてくる。

 

僕の周囲は頑固オヤジばかりと怒っていたら、本当の頑固オヤジは自分だった(笑)。そう気付いてからは、漫画原作だろうが恋愛映画だろうが、どんな仕事の依頼にも「やります」と返事をするようになりました。それはどんなものでも最後は必ず自分味のあめ玉が作れると知ったからです

(出典:【第144回】映画監督、押井守さんから学ぶ「職場を生き抜け!」 | BizCOLLEGE <日経BPnet> http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110112/256900/?P=2

 

先ほどの言葉の続き。「来た球は打つ」、それがプロというものなのだろう。そういった経験を積み重ねていくことで、それまでの膨大な蓄積から自分のオリジナル(=「自分味のあめ玉」)が生み出されるのかもしれない。

 

 

湯浅 政明 (ゆあさ・まさあき)

――「みんなが凄いと言ってるものを「これが凄いのか。なんでなんだろう?」って考えるんです」

 

1965年、福岡県出身。『ちびまる子ちゃん』、『クレヨンしんちゃん』などに作画・設定デザイン・絵コンテ等の役職で参加。初監督作品『マインド・ゲーム』(2004年)で第8回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞。その他の主な監督作品に『ケモノヅメ』(2006年)、『カイバ』(2008年)、『四畳半神話大系』(2010年)、『ピンポン THE ANIMATION』(2014年)がある。

 

とにかく、人が「いい」って言うものに憧れる質なんですよね。みんなが凄いと言ってるものを「これが凄いのか。なんでなんだろう?」って考えるんです。必ずしも自分がそれを面白いと思うわけではないし、同じものを観ても自分が面白いと思うところは世間と違ってたりする。でも、そういうところに、ちょっとずつ寄っていきたい。それはコンプレックスみたいな感じで、若い時からずっとあるんです。「お前の感覚はズレている」とか、ずっと言われ続けてきたので(笑)。ズレ具合を知りたいな、と。人に何か言う時は、そっち寄りに少し修正したり。

(出典:WEBアニメスタイル | 『カイバ』湯浅政明監督・公開インタビュー http://www.style.fm/as/13_special/mini_interview/kaiba_event4.shtml

 

サイケデリックな演出や作画、歪んだパースなどを駆使して独特の世界観を形成している湯浅作品だが、それとは相反するようなコンプレックスを抱えていたという言葉は驚きだ。独自の作風が確立されてもなお、人が喜ぶもの、人が「いい」と思うものを積極的に探ろうとする姿勢には学ばされる。

 

 

細田 守 (ほそだ・まもる)

――「本来技術は作品の一部として消化され、観客に味わってもらうべきものですから」

 

1967年、富山県中新川郡上市町出身。主な監督作品に『時をかける少女』(2006年)、『サマーウォーズ』(2009年)、『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)などがある。

 

作品を観た感想として、『クオリティが高い』とか言うじゃないですか……ああいう論調も解せないんです。本来技術は作品の一部として消化され、観客に味わってもらうべきものですから

(出典:INTERVIEW『おおかみこどもの雨と雪』の細田守監督: 「アニメがもつ記号性を、一度解体する必要があった」 « WIRED.jp  http://wired.jp/2012/07/21/interview-hosoda-mamoru/

 

技術と表現の距離に関する作り手ならではの悩み。それゆえに細田は『おおかみこどもの雨と雪』でアニメの伝統的な技法に対するこだわりが薄いスタッフを意図的に起用し、古典的なアニメの技術を捨て去ろうとした。その言葉にはプロとしての矜持が満ちあふれている。

 

 

原 恵一 (はら・けいいち)

――「年中スランプみたいなもので絵コンテを描くというのは悩むのが仕事です」

 

1959年、群馬県館林市出身。映画クレヨンしんちゃんシリーズでは『暗黒タマタマ大追跡』(1997年)、『嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年)など複数の作品で監督・脚本を担当。『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』では第6回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞。その他の監督作品に『河童のクゥと夏休み』(2007年)、『カラフル』(2010年)などがある。『はじまりのみち』(2013年)では初めて実写映画の監督・脚本を手掛けた。

 

年中スランプみたいなもので絵コンテを描くというのは悩むのが仕事です。僕も手が遅いのですが、そこでアイデアが浮かばないから描けないというのは言わないことにしています。そこで手を抜いたものは後々残るので、何かしらの答えを自分で見つけます。良いアイデアが浮かばなくとも、その中で最良なものを出すようにします。一番悪いのは気分がのらないから描かないと言ってしまうことだと思います。アイデアがでないからいいやとほったらかしたものは結局自分に返ってくるので、ちょっとずつでもいいから進めていくべきですね。完成させることを積み重ねることが大切だと思います。

(出典:原恵一監督が語る、映画『カラフル』の世界 | 公開授業 著名人の特別講義 | 研究・社会連携 | デジタルハリウッド大学【DHU】 http://www.dhw.ac.jp/research/lecture/2010/11/post-6.html)

 

学生向けの講義での発言で、優しい語り口だが、絵コンテに関して「年中スランプみたいなもの」という発言は意外だ。それでもちょっとずつでいいので、前に進む、成功体験を積み重ねることでブレイクスルーが訪れる。一見当たり前に感じることだが、プロでもアマでも共通する重要な指摘だ。

 

 

今 敏 (こん・さとし)

 ――「仕事と趣味を分ける。そんなつまらないことは無いとすら思ってしまいます」

 

1963年、北海道釧路市出身。主な監督作品は『PERFECT BLUE』(1997年)、『千年女優』(2001年)、『東京ゴッドファーザーズ』(2003年)、『パプリカ』(2006年)。

2010年8月24日、膵臓癌により逝去。享年46歳。

 

仕事と趣味を分ける。そんなつまらないことは無いとすら思ってしまいます。ささいな言葉の定義の問題かもしれませんが、お金を稼ぐためにすることは「職」と呼ぶべきであって、それは仕事ではないだろうという認識があるんですね。

(出典:今敏監督インタビュー「20代の仕事について」 – Togetterまとめ http://togetter.com/li/179017

 

今敏独自の仕事観。異論・反論はあるだろうが、仕事と趣味を分けない「公私混同」を、生涯を通じてやり遂げた氏の生き様は純粋にカッコイイし憧れる。

 

仕事だけに集中することをストイックだと感じないような人のみが、その仕事に対する才能があるんだと言ってもいいんじゃないかとすら思っています。

(出典:今敏監督インタビュー「20代の仕事について」 – Togetterまとめ http://togetter.com/li/179017

 

今敏独自の仕事観その2。どんなに辛い作業でも、それを自然にやり続けられることこそ、才能があるということ。それが「やりたいこと」とイコールであればそれほど幸せなことはない。才能に恵まれた天才だけが言える言葉なのか、それとも…?

 

曖昧だからはっきりしないんじゃなくて、黒も白も知っているからはっきりさせることはできない。これはある意味矛盾しているんですが、「はっきりした曖昧さ」というか、白も黒もあっていいんじゃないか。矛盾を抱えたままどう生きて行くのかというのが大切で、「矛盾がなくなれば正解」というのはおかしいと思いますね。

(出典:映画『千年女優』今敏監督インタビュー [映画] All About  http://allabout.co.jp/gm/gc/206089/

 

もちろん「キチンといろんなことが分かった上での話」と補足してはいるが、現実にはさまざまなものが複雑に入り組み、“矛盾”したものを抱えている。そして我々はそれを認めて生きていく必要がある。作品制作の話から派生したものだが、現代社会を生きる上でも示唆に富む言葉だ。

 

 

◎おわりに

いかがだっただろうか。

今回ご紹介した「名言」の数々に対してどう感じるかは各人の自由だ。

だが、こうして少しだけではあるが、彼らの思考回路を覗いてみることで、

新たな「発見」を得ることができたのではないかと思う。

また、彼らの作品に触れる際にも、これからより深く作品を楽しむことができるはずだ。

今回はやむなく取り上げることができなかった人物たちも数多い。機会があればいずれご紹介しよう。

 

 

レファレンス

庵野秀明さんインタビュー(後) 【10年3月特集-春のアニメ祭り!!】

【第144回】映画監督、押井守さんから学ぶ「職場を生き抜け!」 | BizCOLLEGE <日経BPnet>

WEBアニメスタイル | 『カイバ』湯浅政明監督・公開インタビュー

INTERVIEW『おおかみこどもの雨と雪』の細田守監督: 「アニメがもつ記号性を、一度解体する必要があった」 « WIRED.jp

原恵一監督が語る、映画『カラフル』の世界 | 公開授業 著名人の特別講義 | 研究・社会連携 | デジタルハリウッド大学【DHU】

今敏監督インタビュー「20代の仕事について」 – Togetterまとめ

映画『千年女優』今敏監督インタビュー [映画] All About

 

 

(ライター・倉住亮多 アイキャッチ・helmuthess < http://free-photos.gatag.net/2013/09/02/230000.html > )

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