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言の葉グルメ【早稲田編】――言葉を拾い、味わう。すると日常はこんなにも発見にあふれている!

26/09/2014

 

このあいだ『日本語 語感の辞書』(中村明・著/岩波書店)という辞書をめくっていたら、
こんな言葉を見つけました。


「味読」

 

聞き慣れない言葉です。説明にはこうありました。

 

文学作品などを話の筋を追うだけでなく表現の美しさなどをよく味わいながら鑑賞する意で、改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な感じの漢語。

 

読んで字のごとく、という感じですが、
「表現を味わう」というのはいい言葉です。

 

 

ところで、僕は大が付くほどの散歩好きで、理由もなくぶらりとまちに出て歩くのですが、
先日散歩をしているとき、「味読」のことを思いだしました。

 

そういえば、まちには言葉があふれている。
この言葉たちを味読しながら歩いてみると面白いかも…!

というわけで、早稲田界隈に散らばる言葉たちを味読しながら歩いてみました。
今回は、その散歩で味わった言葉たちの一部を、グルメレポートしたいと思います。

 

 

 

早稲田の正門から

 

散歩は早稲田大学(早稲田キャンパス)の正門からスタートです。
どうせなので早稲田大学だとわかるものを写真に撮ろうと思ったのですが、
この大学には表札が見当たらない!なぜだ。僕が見逃しただけ?
正門にはこれ見よがしに大きな表札があるものだと思っていました。
仕方がないので遠目に大隈像を写します。

 

9月23日早稲田大学内の様子。「地球感謝祭」が開催されていました

9月23日早稲田大学内の様子。「地球感謝祭」が開催されていました

 

そういえば「正門」という言葉、
もちろん、他の門が「誤った門」というわけでは無いはずなので、
「正しい門」ではなく「正面の門」ということでしょう。
英語だと main gate と呼びますので、字面通りに訳せば「本門」が当てはまりそうです。
「正門」「表門」「本門」はどれも同じような意味を持っていますが、
「正門」が、正式っぽくて、もっとも真面目そうな語感があります。

 

ところで、早稲田大学に行くには、駅からだと3つのルートがあります。
それぞれのルートを考えると、
東西線早稲田駅ユーザーは南門から
西早稲田駅,高田馬場駅ユーザーは西門から
都営荒川線早稲田駅ユーザーは北門から入るのが近いので、
この正門は、通る学生が最も少ない門ではないでしょうか…。切ない正門です。

 

考えてみると、「正門」(正面の門)と書かせるということは、
大学にも前(正面)と後ろがある、ということになります。
これは(どうでもいい事ですが)意外な発見!
「早稲田はどこを向いているのか」と地図を見たのですが、これはよくわかりませんでした。
ちなみに、正門のほぼ対極、すなわちお尻の位置にあるのが西門ですが、
僕はいつもこのお尻の門から通学しています。

 

 

 

擬態語は音を与える

正門を出て左に進むと大隈通り商店街。実はキャッチコピーがついています

正門を出て左に進むと大隈通り商店街。実はキャッチコピーがついています

 

大隈通りは早稲田の学生が多く行き来する道ですが、
そこでこんな言葉を見つけました。

 

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音や声を言語化した擬音語に対して、「にこにこ」は状態や様子を表す擬態語のひとつです。

 

さて、その擬態語ですが、これは擬音語とは違って、
元から意味を知っていなければ、言葉からだけでは意味を想像できないものです。
それが笑顔を意味することを知っていなければ、「にこにこ」と言われてもピンと来ないはずです。


その代りといっては何ですが、擬態語は逆に、音の無い状態そのものに音を与えています。
元々、笑顔に音は無いけれど、「にこにこ」という言葉によって笑顔は音を持ったわけです。

 

 

それが店名として固有名詞にまでなっているのだから、笑顔の出世ぶりは目覚ましいです。

 

 

名詞の独り歩き

早大南門通りには工事中の建物があって、そこにはこんな垂れ幕がかかっています。

 

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右下に「不審者を見たら迷わず110番」とあるのですが、
多くの場合、110番をすることよりも、実際に他人を不審者と見なして良いのかが一番の迷いどころです。

 

ところで、「不審者」というワードでGoogle画像検索すると、
こんな画像がでてきます。

 

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どうやら、「不審者」という言葉には

  • 帽子を深くかぶっている
  • サングラスやマスクで顔を覆っている
  • 男性

というイメージが共有されているようですね。僕もそういうイメージを持っています。
でも実際にイメージ通りの人ってあまり見かけません。
だから道端で見かけた他人を「不審者」と見なして良いのかどうか、迷いがあるんです。

 

元々「不審」という言葉は「疑わしい」という意味があるのですが、
これに「者」がくっついて「不審者」という一つの名詞になると、
それは「不審」という言葉の意味を飛び越えて
独自のイメージを持たされてしまっているようです。
名詞は独り歩きしてしまいやすいのです。

 

 

また、「警備強化実施中」というのは、「警備強化」を名詞として使っているので
「実施中」という言葉まで付けることになり、余計に堅苦しくなっていますが、
「警備強化中」で内容は十分に伝わります。

 

名詞化された言葉たちは、実はかなり日常的に使われているのではないでしょうか。
僕たちは、名詞化された言葉の使用によって
知らず知らずのうちに言葉に独自のイメージを持たせていたり、
言葉を余計に堅苦しくしたりしているのかもしれません。

 

 

 

「分煙」の言葉から抜け落ちているもの

 

早稲田通りにあるカフェに入りました。
ここのカフェ、喫煙ゾーンが分けられています。
全部で70近くある席のうち、喫煙席は2階の
ガラスパーテーションで区切られた場所にある10席ほどだけ。

 

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「分煙」といえば、CMなどでも一般的に使われている言葉です。
「煙を分ける」と書きますけど、でも実際には「煙」というより「人」を分けています。

 

では、人を分けられない場合はどうなるのでしょう。
仮に、喫煙者と非喫煙者のペアが来店した場合を考えてみましょう。
3つのパターンが考えられそうです。
(1)非喫煙者は喫煙ゾーンで、煙のなかで我慢しなきゃいけない
(2)喫煙者は禁煙ゾーンでタバコを吸えず、我慢しなきゃいけない
(3)そもそも喫煙者と非喫煙者は一緒にカフェに来なくなってしまう
いずれにしても、誰かの忍耐なしには、分煙は成り立たなそうです。

 

 

ところが、「分煙」という言葉からは人の存在が抜け落ちてしまっており、
あくまでシステム上の問題として解決が図られてしまっている感じがします。

 

人のいないところにタバコの煙はたたないですし、
システムに頼るより、もっと人にスポットを当てた解決策はないのでしょうか。
実際には、すべての人が満足する空間づくりというのはおそらく無理です。
だから、すべての人に何らかの形で少しずつ我慢してもらう。
そのための方法を考えれば、何か変えることができるかもしれません。

 

というわけで、「分煙」という、システムに対応した言葉ではなく、
人に対応した新しい言葉が欲しいです。・・・思いつきませんが。

 

 

おわりに

 

いかがだったでしょうか。
ここで取り上げた以外にも、まちには言葉がたくさんありました。
別の言葉を連想してみたり、英語に変換してみたり、言葉自体を分解してみたりすると、
見慣れた言葉にも面白い発見があるかもしれません。

 

今回は早稲田界隈の地名や土着の言葉を扱いませんでした。
あえて、どこの場所でも見慣れた言葉を取り上げて味わってみる方が、
日常のなかで凝り固まってしまったモノの見方や考え方をほぐしてくれる気がしたからです。
もちろん、早稲田ならではの言葉を探せば、もっと別の面白さがあるかもしれません。

 

 

お散歩好きの方、ぜひ試してみてはいかがでしょう。

 

 

 

(ライター:マチドリ)

 

 

 

 

 

本日のお品書き
  • 正門
  • にこにこ
  • 不審者を見たら迷わず110番!
  • 警戒強化実施中
  • 分煙

 

 

 

おまけ

 

本記事タイトルは、言葉を味わうので、「言葉グルメ」。
いや、これでは何だか味気ないので、ためしに「言の葉グルメ」にしました。
「の」が間にあった方が「葉」が強調されて、たくさんの言葉を多様な切り口で
切り取ろうとする感じが出ます(こじつけ)。
また散歩する機会があれば、記事にしてみたいと思います。

 

 

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