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“史上最悪のクソゲー”と呼ばれたゲームが埋められるまで:伝説のゲーム『アタリE.T.』を目撃せよ!(前編)

01/02/2015

 

テレビゲームが「歴史」として語られる時代が来た。

 

 

2013年は「ファミコン生誕30周年」に沸いた年だった。いまだにゲーム機一般を表現するのに「ファミコン」という言葉を使う人がいるほど、その存在とネーミングは人々の記憶に深く刻み込まれている。

 

今年2015年、そのファミコンの後継機「スーパーファミコン」が25周年を迎える。発売当時、私はまだ小学生だったが、その洗練されたグラフィックとオーディオに覚えた衝撃を、今でも憶えている。

 

多くの人にとって、ゲームの歴史と言えば「ファミコンの歴史」であり、ファミコン後に発売されたゲーム機の歴史である。

 

それゆえ、ファミコン以前から「テレビゲーム」が存在したことを知らない人も多い。

 

 

2014年、米国ニューメキシコ州、アラモゴードという片田舎が突如、「ゲームの歴史」に沸いた。

 

ドキュメンタリー映画制作のために行なった発掘の結果、30年以上前に生産されたゲームカートリッジの山が、ゴミ埋立処分場から発掘されたのだ。

 

ファミコン発売以前に市場を席巻したゲーム機「アタリ2600」用のゲームカートリッジが次々と掘り出されたが、それらの多くはほとんど注目されなかった。

 

ただ一作品のみ、その発見が大ニュースとなって世界中を駆け抜けた。

 

 

『E.T. The Extra-Terrestrial』、通称”アタリE.T.”である。

 

 

「ゲーム史上最悪のクソゲー」という伝説

アタリE.T.とはどういうゲームなのか。なぜここまで注目されたのか。

 

それを知るためには、ファミコン発売以前に起きた、テレビゲーム市場崩壊の危機の歴史を紐解く必要がある。

 

 

アタリE.T.がプレイできたゲーム機「アタリ2600」は、日本でこそ知名度が低いが、ファミコンがヒットする以前の米国では、家庭用ゲーム機の代表とも言える存在であった。

 

1972年にアーケードゲーム『ポン』を世界で初めてヒットさせ、「ビデオゲームの父」とも呼ばれるノーラン・ブッシュネルが創立したアタリ社は、1977年、新しい家庭用据置型ゲーム機「アタリ2600」を発売した。

 

出典:Wikipedia

出典:Wikipedia

 

発売当初こそ売上は低迷したが、アーケードで爆発的な人気を誇った『スペースインベーダー』が1980年に移植されると、アタリ2600は一気に家庭用ゲーム機の花形となる。

 

当然カートリッジの販売数も伸び、特にアーケードで人気を博したゲームの移植版は飛ぶように売れた。中には『パックマン』のように、ひどい品質にもかかわらず、ゲーム機本体の販売数よりもはるかに多い数のカートリッジを生産することもあった。

 

当時のアタリ社の経営陣の判断能力が狂っていたかどうかは分からない。だが、映画『E.T.』のヒットを目の前にして、そのゲームの生産数を見誤ったのは確かだ。

 

1982年、アタリ社の親会社・ワーナー・コミュニケーションズが大ヒット映画『E.T.』のゲーム化ライセンスを獲得すると、クリスマス商戦に間に合わせるように制作を行なうことが決定された。

 

その制作に許された期間、わずか六週間足らず。

 

現在のように大量の資金と人員を投入して数年がかりで制作するのが普通というわけではないとはいえ、当時の基準としてもかなり無理のあるスケジュールであった。

 

こうして作成された『E.T. The Extra-Terrestrial』を、アタリ社は500万本生産した。

 

このアタリの見込みが、全く的外れだったわけではない。販売本数150万本という数字は、決して悪いものではない。むしろ大ヒットだ。

 

それでも、テキサス州エルパソのアタリ社の倉庫には、売れ残ったり返品されてきた350万本が残った。

 

ゲームファンはその品質に怒り、批評家はこぞって悪評を書き立てた。

 

アタリ社は大量の在庫をニューメキシコ州の片田舎のゴミ捨て場に埋めた。

 

ご丁寧に重機のキャタピラで踏み潰し、表面をコンクリートで固めて。

 

映画の中で描かれたように、愛すべき存在だったはずのドット絵の宇宙人は、いまや子どもたちの夢を壊す火星からの侵略者となった。

 

アタリE.T.の「クソゲー」っぷりに落胆した人々は、もはやゲームの楽しさを信じなくなった。

 

ゲームソフトは全く売れなくなり、ゲーム企業は次々と潰れ、アタリ社も経営難、分社化の憂き目にあった。

 

俗に言う「アタリ・ショック」である。

 

 

こうして、ゲーム市場は完全に崩壊した。

 

 

我々ゲーマーはアタリE.T.と向き合う必要がある。

以上が、ゲームファンの間でよく語られる「伝説」である。

 

アタリE.T.が「クソゲー」すぎたが故にゲーム市場が崩壊し、売れ残ったアタリE.T.は「クソゲーの墓場」へと埋められた……。

 

端的に言えば、そういう話だ。

 

クソゲーの伝説だ。

 

だから2014年、伝説を追い求める者達にニューメキシコ州アラモゴードの土を掘らせたのは、シュリーマンがうなされたトロイへの夢に似たものだったに違いない。

 

現在のゲーム産業で一角を担うマイクロソフトが、ドキュメンタリー映画『Atari: Game Over』の企画に出資して掘り起こさせたものは、彼らの遠い祖先の遺体であり、はるか神話の時代の記憶を伝える聖遺物だったと言えるだろう。

 

 

アタリE.T.があって、今のゲームが存在する。

 

ならば、我々がゲームの歴史を知ろうとするならば、史上最悪のクソゲーと呼ばれたその伝説のゲームと直接、語り合わねばならない。

 

 

だが、どうやって?

 

ピラミッドはエジプトに行けば見られる。アンコールワットもマチュピチュもラスコーの壁画も、見ようと思えば見ることが出来る。

 

だが、「掘り出されたアタリE.T.」を目の当たりにすることなど、果たしてどうやったらできるだろうか?

 

 

そんな時、我々は驚くべき情報をつかんだ。

 

なんと、発掘されたアタリE.T.は、既に日本に来ているというのだ……!

 

 

【次回予告】

 

世界が歴史的発見に戦慄く中、「掘り出されたアタリE.Tを手に入れた」と宣言する日本人が現れた。
さらに大胆にも、発掘されたアタリE.T.を一般公開することを計画しているという。
彼はいったい何者なのか……それを確かめるべく我々取材班はインタビューを申し入れ、快諾してもらうことに成功した。
果たして彼の狙いとは?そのニヒルな口元からはどのような言葉が語られるのか?

 

驚天動地の後編へ続く……!

 

(ライター:よむぺ アイキャッチ:Xbox Video)

 

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