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“E.T.を買った男”、模範的工作員同志(@KgPravda)氏ロングインタビュー:伝説のゲーム『アタリE.T.』を目撃せよ!(後編)

01/02/2015

 

前編で書いたように、ニューメキシコ州アラモゴードで30年ぶりに発掘されたアタリ2600用ゲーム『E.T. The Extra-Terrestrial』、通称「アタリE.T.」を購入することに成功、展示会を企画している男がいると聞きつけたgotamgライター・よむぺは、早速インタビューを申し込んだ。

 

男の名は、「模範的工作員同志(@KgPravda)」。

 

“工作員”を名乗りながら、ニコ生やTwitter上で日々「低評価ゲーム」の魅力を伝える活動をしているという、謎の人物だ。

 

さらに、「マイナーゲーム界の大御所」「ミスター・神ゲー(Mr. KAMIGE-)」「小さな定食屋に急に来店する海原雄山」など、聞くだに怖気の走る数々の二つ名をほしいままにしているらしい。

 

まったく、とらえどころのない男である。

 

決して素顔を明かさない氏、今回のインタビューも「顔写真はNG、声の印象から受けた似顔絵の掲載のみ許す」という厳しい条件をつきつけられた。

 

幾多の困難を経て、ついに実現したインタビュー。心してお読みいただきたい。

 

 

interview7

 

「ソフトの傷を見て、皆さんが望んできた都市伝説の罪深さを感じていただけたら」

よむぺ:
さっそくですが、今回工作員さんが入手されたアタリ2600『E.T.』について伺っていきたいと思います。工作員さんはどのような経緯で、このE.T.を手に入れようと思われたんでしょうか?

 

模範的工作員同志(以下、工作員):
アタリのE.T.が発掘される、という話を聞いた時から……ではなくて、実はもっと前から「掘り出されたら買おう」ということは決めていたんです。アタリE.T.の都市伝説って、世界中のゲーマーの中で最も有名で、象徴的なものじゃないですか。ですが、実際のところ、それは「みんなが望んだ都市伝説」になりつつあるような気がしてたんですね。

 

よむぺ:
みんなが望んだ都市伝説……ですか?

 

工作員:
「一本のゲームが市場を崩壊させたんだ!そのゲームがクソゲーすぎたから……!」みたいな。実際のところ、現実に起きたこととは少し違うんですけど、みんなが欲しがっていた「こういうゲームがあったら面白いだろうな」というようなお話にすぎないんじゃないのかな、とずっと感じていたんですね。でも、すでに広まってしまった都市伝説に対して、「いや、違うんです。本当は数字としてはこうで……」みたいに細かく具体的な説明をしていっても、おそらくほとんどの人にとってそんな話は面白くないから、みんな聞いてくれないだろうなと思っていたんですよ。

 

よむぺ:
「みんなが欲しがっていた面白い話」というのは、いわゆるアタリショック(※)についてですね。「E.T.というクソゲーのせいで、ゲーム市場が崩壊した」という、みんなが望むような伝説が創りあげられてしまった、と。

 

※アタリショック:1983年から1985年にかけて北米で起きた、家庭用ゲームソフト市場の崩壊を指す。当時のゲーム産業最大手・アタリ社の名を取ってこう呼ばれる。専らソフトの粗製濫造によるユーザー離れが原因とされているが、ゲームファンや研究者たちの調査により、今ではその説明には疑問が呈されている。

 

工作員:
おっしゃるとおりです。

 

よむぺ:
その創られてしまった伝説を覆すために、発掘されたE.T.を手に入れた、ということなんでしょうか?

 

工作員:
海外だと、アタリのファンたちが昔のマーケットの情報を掘り出して、「アタリショックはなかった」という検証をしたりもしているんですけど、それでは出来上がってしまった伝説は覆らないだろうなぁと僕は思っていたので、むしろゲームのパッケージを持ち出してきて、そのボロボロさ加減を見せることで「このゲームが都市伝説をつくられてしまったことで、どのくらいの低評価を受けて、どのくらいの傷を負ったか」ということを、目に見える形でみなさんにお見せしたかったんですよ。

 

よむぺ:
埋められて掘り出されてきた、そのゲームの姿自体が……。

 

工作員:
そう、説得力になるんではないか、と。

 

よむぺ:
この伝説の罪深さを(笑)。

 

工作員:
罪深さを、ですね(笑)。僕自身、「アタリショックは本当はなかったんです」みたいな話を聞いても、当時のゲームの市場を取り巻く細かい数字がたくさん並んでいて、難しいな、あまり深く入れないな、と思うところがあったので、実際にソフトの傷を見て頂いて、その上でE.T.がどういうゲームだったのかを知ってもらって、皆さんが望んできた都市伝説の罪深さを感じていただけたらな、と思ったわけです。

 

よむぺ:
この痛ましい姿を見て、感じろ!ということだったんですね(笑)。オークションには発掘された『E.T.』が何本か同時に出品されていましたが、どのソフトに入札するかという選択の時にも、見た目が判断基準になったりしたんですか?

 

工作員:
おっしゃるとおりですね。できるだけ土がついてボロッボロの奴を選びました。

 

よむぺ:
他の入札者の方たちも、そういうのを狙っていたんでしょうか?

 

工作員:
ありがたいことに、他の方はきれいな状態のものを狙っていたみたいで、ボロボロの奴は比較的安い値段で落札できましたね。

 

よむぺ:
「埋められていた」という事実が価値を上げているのに、不思議な感じですね。

 

工作員:
「埋められていても、きれいな方が欲しい」と(笑)。

 

よむぺ:
ちなみに、埋められていなかったE.T.の方は、中古市場にたくさん出回っていますよね。

 

工作員:
たくさんありますね。海外でアタリのゲーム機を買うと、起動テスト用のゲームソフトを何本かつけてくれることが多いんですけど、よくE.T.がついてきます。梱包用のプチプチシート感覚でE.T.を入れて送ってきますよ(笑)。中古でパッケージありのものを買っても、だいたい20ドルくらいですね。

 

よむぺ:
パッケージありのレトロゲームの中には、結構なお値段のものもありますから、20ドルは決して高くないですよね。やはり「埋められていた」ということ自体が、価値になっているんですね。

 

工作員:
いくら「このゲーム、ひでぇ!」と言ったところで、普通はゲーム自体がボロボロになったりするわけじゃないじゃですか。なのに、E.T.だけは「ひでぇ!」と言われたことが直接、パッケージがボロボロになる結果になっているソフトなんです。ゲームに評価をつけることの結果が、目に見えて表れているソフトだなと、買ってみて思いましたね。

 

よむぺ:
「ゲームに点をつけるってことは……こういうことなんだ!」、と(笑)。

 

工作員:
「こうなるぞっ!」、と(笑)。

 

よむぺ:
最新のゲームで例えるのはアレですけど、「妖怪が出るぞ!」ってことですかね。妖怪E.T.(笑)。

 

工作員:
(笑)。日野社長※の奴ですね。

 

※日野社長:株式会社レベルファイブ代表取締役社長・日野晃博氏のこと。経営者兼クリエイターとしてヒット作を生み出し続け、2014年は『妖怪ウォッチ』で世を席巻した、ゲーム界の風雲児。

 

「ゲームを買ったっていうよりも、歴史の一部とか物語を買ったっていうような感覚なんじゃないかな」

よむぺ:
そんな伝説のゲームを落札されたわけですけど、落札してから送られてくるまでの間、どんなお気持ちで待っていたんですか?

 

工作員:
落札直後は「買ったぞワー!」みたいなツイートもしたんですけど、正直、半信半疑だったんですよね。だって「都市伝説」ですから。まだ発掘の様子の映像もそんなに公開されていない時期でしたし、それが本物かどうかも半信半疑でした。なので、実際に口座からお金が引き落とされているのを見て、はじめて「ほんとに買っちゃったんだ!」と……。

 

よむぺ:
急に自覚がやってきちゃった(笑)。

 

工作員:
それまでは「本当にそんなものが存在するのかな」という、疑問がだいぶありましたね。

 

よむぺ:
それまで長く「伝説」だったわけですからねぇ。

 

工作員:
どちらかと言えば「埋められたE.T.」なんて、そんなかわいそうなモノが存在しないほうがいいですから……。

 

よむぺ:
(笑)。で、そんなE.T.がとうとう発送されて、日本に向かってくるわけですよね。

 

工作員:
通知が来ましたよ、「E.T.が日本の税関で検査されています」って。

 

よむぺ:
(爆笑)

 

工作員:
(笑)。いや、でも本当に恐ろしかったですよ、それは。以前、3DO(※)の『配管工はネクタイをつけない』(※)っていうゲームを輸入しようとした時に、ポルノだということで税関で止められたことがあったんです。今回のE.T.はポルノではないんですけど、「アラモゴードの土をそのままつけてお送りします」みたいなことが書かれていたので、土の持ち込みとかで検査に引っかかってしまうんじゃないかと、本当に怖かったですね。

 

※3DO:米3DO社が提唱したマルチメディア規格、またはその規格の下で生産されたマルチメディア機のこと。日本では1994年に松下電器から発売され、故・飯野賢治氏が監督を務めた『Dの食卓』などがヒットした。

 

※配管工はネクタイをつけない(Plumbers Don’t Wear Ties):1994年に発売された3DO用アドベンチャーゲーム。実写取り込みで展開されるアダルトでバカな内容が、今でも一部のゲームファンの語りぐさとなっている。

 

よむぺ:
そんな税関の厳しいチェックをくぐり抜けてやってきたE.T.ですが、開封した瞬間はどうでしたか?

 

工作員:
これは買った人間にしか分からないと思うんですけど……埋められていたアタリE.T.のカートリッジ、本当にゴミ捨て場のニオイなんです。

 

よむぺ:
(爆笑)

 

工作員:
本当にゴミ捨て場のニオイなんですよ……!開けた直後は興奮で気づいてなかったんですけどね。で、嬉しくなってすぐに素手で触れちゃったんですけど、その手に土がついた瞬間に、「本当にオレは、冗談じゃなく買ったんだ」と……。あと、一見してカートリッジがグニャグニャに、S字型に曲がってたんです。当初は「埋められたカートリッジを起動してみました」みたいな動画を作りたいなーとも思ってたんですけど、それを見て自分の浅はかさを痛感しましたね。

 

よむぺ:
あー、じゃあもう起動実験をできるとか……。

 

工作員:
そういう状態ではなかったですね。ちょうどウィキペディアのアタリE.T.のページを見ながら開封していたんですけど、カートリッジ本体のボロボロさ、そこに積み重ねられた傷を見た後で、そのウィキペディアに書いてある「クソゲーだ」みたいな情報を見たら、一文一文が急に罪深く見えてくるんですよ。

 

よむぺ:
(笑)

 

工作員:
「お前らの言葉の結果が、これだぞ!!」と。「お前ら、軽くウィキペディアを編集したりしているけど……その結果がこのボロボロさだぞ!!」と。

 

よむぺ:
そう聞くと、たしかに「罪深い」ですね……(笑)

 

工作員:
本当はもっと面白おかしく言いたかったんですけど、あまりにもソフトがボロボロすぎて……なんでしょう、いつも「ゲームの低評価は許さない!」ってことを言ってますけど、集まった人間のヘイトってものは本当に恐ろしいんだなと、改めて感じましたね。その姿に、いままでの全てのゲーマーの怒りがぶつけられてるわけですから。

 

よむぺ:
なるほど(笑)。ちなみに、E.T.はそんなにゲーマーに嫌われたゲームだったんですか?

 

工作員:
低評価ゲームではありますし、有名ではあるんですけど、いわゆるマニアが激怒するような作品だったかと言われると、ちょっと違うんですよね。個人的には、アタリ2600のファン、まぁ主にアメリカのファンですけど、彼らはどちらかというと、「E.T.はアタリ2600の中で一番ひどい作品ではない」と、そういう評価をする方が多い気がします。どちらかというと「クソゲーといえばアタリE.T.」みたいな、みんなで共通認識を持ちたいがために使われている、インターネットスラングのひとつとして扱われているような感覚がありますね。それはまさに、「ゲーム市場を崩壊させたクソゲーが存在する」、そういった話が世の中に存在してほしいなぁという、「望まれた都市伝説」そのままの姿という気がします。

 

よむぺ:
日本で言えば『オプーナ』(※)がよく言われますね。あぁいう感じということなんでしょうか?

 

※オプーナ:2007年、コーエー(現・コーエーテクモゲームス)より発売されたWii用RPG。当初発表された販売目標の強気な姿勢や、その割に垢抜けないキャラクターデザインなどがゲームファンたちの間で話題になり、プレイした人々からの高評価にもかかわらず、クソゲーの代表としてウェブを中心に広く知られることとなった。

 

工作員:
歴史をさかのぼっていった時にオプーナみたいな存在があったら、どれだけ面白おかしく語られるだろうか、っていう……なんか、アメリカの歴史を感じさせます。向こうの人からしたら、歴史の一部としての都市伝説ですからね。そらもう、博物館も入札に行くわけですよ。

 

よむぺ:
あ、ちなみにオークションには10本くらい出品されたんですよね?

 

工作員:
第一次販売では、箱付きが10本、箱なしが10本だったはずです。

 

よむぺ:
じゃあ、計20本ですか。あれって、どういう人が落札したかは分かるんですか?

 

工作員:
出てましたね、いくつかは。ひとつは、僕が競り合っていたのでわかったんですが、イタリアの博物館。ローマの。あと、アメリカのどっかのコレクターが、ツイッターで画像を上げていたような気がします。初期に売られた20本に関しては、後はインターネット上に画像を上げている人っていうのは、全然いないですね。二回目、三回目のオークションに関しては、画像を上げられている方もちらほらいらっしゃいましたけど。

 

よむぺ:
じゃあ、謎の人たちっていうのも結構いるんですね。

 

工作員:
謎です。一回目に関してはほとんど謎ですね、名乗り出ないですし。

 

よむぺ:
コレクターにしてみれば、喉から手が出るほど欲しい逸品ですよね。かなり激戦だったんじゃないですか?

 

工作員:
オークションが終わる一日前は、だいたい6万円くらいだったんで、僕としては「これは余裕だな」と思ってました。で、オークションの最後の日、先に出されたソフトから順々に終わっていくんですけど、結果が決まる10分前くらいに、一番最初に出されたソフトに急に3倍くらいの値段がドンとつけられて。

 

よむぺ:
あー、ギリギリを狙って入札する人が……!

 

工作員:
それからは、パニックの一言でしたね……「これはヤバイ」と。だいたいゲームの海外オークションって、(入札の動きが一度止まった時の)2倍の値段をつければ圧倒的に勝てるんですけど、今回は3倍の値段をつけても勝てなかった、っていう。

 

よむぺ:
ちなみに、最終的なお値段は?

 

工作員:
僕のですか?そうですね、あんまり……。

 

よむぺ:
露骨には(笑)。では、何倍くらいだったんですか、普通のパッケージ付きE.T.の。何本買えちゃうくらい?

 

工作員:
ちょっと計算してみましょうか?……(いちにいさん)……えーっと、普通の箱付きのE.T.だと……だいたい70本くらい。

 

よむぺ:
(笑)

 

工作員:
E.T.にニューメキシコの土がついてると、普通のE.T.がだいたい70本くらい買える、と。

 

よむぺ:
すごいですね……!

 

工作員:
ちょっと感じたんですけど、おそらくマニアだけじゃなくて、E.T.用に予算をつけてる公的な機関がオークションに参加してたんじゃないかなと思いますね。

 

よむぺ:
さっきも博物館が入札に、というお話でしたね。そういうところが予算を使って奪取に来たと。

 

工作員:
いつもの、せせこましくちょっとずつ値段を上げていく、みたいな感じのオークションではなかったんです、今回は。ドカンとつけてましたね、みんな。

 

よむぺ:
それはつまり、このゲームにはゲームマニアから見た貴重さとは別の貴重さがある、ってことなんですかね?

 

工作員:
ローマの博物館の人やスミソニアン博物館(※)の人も言ってましたけど、テレビゲームの歴史であることもそうですし、アメリカの人にとってはもうアメリカの歴史の一部である、という認識でした。面白いのは、ただのゲームの歴史にとどまらず、産業史としてその方面のメディアでニュース記事になっていたり、あるいはニューメキシコという地方の歴史として、ニューメキシコのローカルブログやニュースサイトが取り上げたりですとか、E.T.発掘のニュース自体が単なるゲーム発掘のニュースに留まっていなかったんだなということが、オークションを通じて改めて分かりましたね。

 

※スミソニアン博物館:米国を代表する博物館であり、多分野に渡って収集・教育研究を行なう複数の博物館および機関から成る。近年、ビデオゲームの収集・展示に力を入れていることで知られる。

 

よむぺ:
はー、なるほど……そのゲームが生まれてきた時代だけじゃなく、その背景や地方の歴史にもなっているということなんですね。

 

工作員:
はい。僕は母親から「あなたはお金を出してゴミを買ったのよ」って言われましたけど……。

 

よむぺ:
(笑)

 

工作員:
僕も含めて買った人はみんな、「ゲームを買った」っていうよりも、どちらかというと本当に「歴史の一部」とか、「物語」を買った、っていうような感覚でいるんじゃないかな、と思いますね。

 

「低評価をつけられているゲームってのは、不運にも面白い遊び方を見つけられる人がいなかったソフトなんじゃないか」

 

よむぺ:
さて、工作員さんと言えば「低評価ゲーム」のレビューをされている方で……。

 

工作員:
改めて言われると恥ずかしいですけどね(笑)

 

よむぺ:
その工作員さんのライフワークであるところの、「ゲームレビュー」について伺っていきたいと思います。ゲームのレビューをされている方はたくさんいらっしゃいますが、「低評価ゲーム」に特化してレビューされている方は、そんなにはいないですよね。

 

工作員:
どちらかというと、僕はそういう感覚ではないです。僕はただ、「自分の持っているゲームをレビューしているだけ」ですから。

 

よむぺ:
(笑)でも、『ファミ通』のクロスレビュー(※)やMetacritic(※)のようなサイトで低い点数をつけられてしまったゲームをコレクションされてらっしゃるんですよね。今は何本くらいになりましたか?

 

※クロスレビュー:編集者たちがゲームをレビューして得点をつける、ゲーム雑誌『ファミ通』の名物企画。

 

※Metacritic:映画や音楽、ゲームなどメディア・コンテンツ作品に対する批評を収集し、メタスコアと呼ばれる独自の評価点をつけるレビュー集積サイト。

 

工作員:
正直数えたことがないですが、1部屋以上はあります。1.7部屋くらいですかね?

 

よむぺ:
単位が「部屋」ですか!ゲームの数え方としては異例ですね……そもそもは、どうして集めようと思ったんですか?

 

工作員:
もともとゲームが好きで色々買ってたんですけど、明確にモノを残そうと思い始めたきっかけになったのは、『松方弘樹のワールドフィッシング』(※)というゲームからです。このゲーム、僕はすごく面白いと思ってたんですけど、一度友だちを家に呼んだ時に「松方弘樹のワールドフィッシング、めちゃくちゃ面白い」って話をしたら、彼はいっさい信用しなかったんです。「松方弘樹の釣りゲーで、面白いわけがないだろ!」って。

 

※松方弘樹のワールドフィッシング:釣り好きで知られる俳優・松方弘樹をフィーチャーした釣りゲーム。1996年にBPSから発売。

 

よむぺ:
(笑)

 

工作員:
で、そこまで言うなら見せてやる、ってことで、その場で『松方弘樹のワールドフィッシング』をプレイし始めたんですけど、その当時でも10年前くらいの古いプレイステーション1のソフトでして、動かなくなっちゃってたんですよ。そしたら「ほら、やっぱりつまんねぇから。やらなくても分かるんだよ!」みたいなことを言われたんですね。その時に「これはモノを残しとかないと、面白いってことも言えなくなっちゃうぞ」って感じて。

 

よむぺ:
あー、なるほど。

 

工作員:
今現在でもプレステのゲームはたくさん残っていますけど、メディアの寿命でどんどん起動しなくなっていってるじゃないですか。(ゲームハードなどの)環境もどんどんなくなってきてますしね。そうなると、紙媒体である雑誌とか、あるいは引き継がれているインターネット上のレビューしか残らない。「このゲームは面白いよ」って言っても、誰にも伝わらない時代が来ちゃうんじゃないかと、そう思ったんですよね。明確に「未来に残そう」って思ってゲームを買い始めたのは、それがきっかけでした。

 

よむぺ:
つまり、「このゲームは面白くない」と言われた時に、「ほら、面白いだろ」と見せつけるために。

 

工作員:
「インターネットのレビューなんて信用するんじゃないぞ」と。遊んで、試してくれ。そう言いたかったのがきっかけです。

 

よむぺ:
先ほど伺ったE.T.の話とつながるところがありますね。伝説として語り継がれてしまっているけど、モノ自体はそうではないぞ、と。いわゆる「クソゲー」と呼ばれてしまったゲームは、普通はプレイしないですからね。

 

工作員:
嘆かわしいことですね……。

 

よむぺ:
ちなみに、持っているゲームの中で一番思い出深いゲームってありますか?

 

工作員:
『あぁ播磨灘』という、メガドライブのゲームです。このゲーム、一番最初に父親に買ってもらったゲームで、すごく大切に遊んだんですね。面白い面白いって言いながらずっと遊んでたんですけど、ある日、「Beep! メガドライブ」(※)という雑誌で、読者がゲームに点数をつけて総合ランキングをつくるという「読者レース」という企画があっていたんですけど、僕が超面白いと思ってきたこの『あぁ播磨灘』が、その企画ではクソゲーとしてメチャクチャ評価が良くなかったんです。僕にとっては親に買ってもらったゲームでしたし、このゲームしか知らないくらいの状態だったのに、それを面白いと思っている自分の感性が、世の中の聞いたこともないオッサンたちによってメチャメチャ馬鹿にされていると。

 

※Beep! メガドライブ:1989年に休刊したゲーム雑誌『Beep!』を引き継ぐ形で創刊された、メガドライブ専門誌。読者参加型のゲーム評価企画「読者レース」で繰り広げられた最下位争いが注目を集めた。

 

よむぺ:
(笑)

 

工作員:
それを知った時の衝撃たるや。最初に遊んだゲームがそこまで否定されまくって、お前の感性はおかしいぞ、と集団の圧力で言われたことが、今現在の僕の価値観につながっている……かも、しれないですね。

 

よむぺ:
最初にあぁ播磨灘のトラウマがあり、松方弘樹があり……そして今に至る、と。

 

工作員:
人生の節々に濃いオッサンばっかりが……。

 

よむぺ:
オッサンばっかりが登場してますね(笑)。

 

工作員:
でも『あぁ播磨灘』は、本当にメチャクチャ面白いんですよ!スモウトリが飛んだり、光を出したり……!メガドライブの『イナズマイレブン』(※)なんですよ!!

 

※イナズマイレブン:株式会社レベルファイブ制作の大人気サッカーゲームシリーズ。主人公たちの繰り出すド派手な必殺技が魅力のひとつ。

 

よむぺ:
(笑)。まぁそういう風に説得するにも、やはりモノがないと言葉には負けてしまう、ということなんですねぇ。

 

工作員:
そうです。

 

よむぺ:
先程名前の出た『Beep!』はテレビゲーム黎明期からのゲーム雑誌ですし、『ファミ通』も長くクロスレビューをやっていますよね。工作員さんもニコ生で低評価ゲームのレビューをやってらっしゃるわけですが、そういう「ゲームレビュー」というものについて、どう感じられていますか?

 

工作員:
僕のニコ生は「ゲームレビューをやっている」というより、「こうやったら面白く遊べるんだよ」ということを皆さんに提供できる場であったらいいなと思ってやってます。低評価を受けているゲームのほとんどは、まだ正しい遊び方だったりとか面白い遊び方が見つけられていないだけなんです。例えばミカド(※)では、昔の格闘ゲームを稼働させて、格闘ゲームをめちゃくちゃやり込んでいる人たちに今やらせることで新しい遊び方を生まれて、昔はまったく見向きもされなかったゲームが今の人たちの目に触れて、その結果、また新しい遊びの研究がされてる。中野TRF(※)でも、当初はバランスが崩壊してて「こんなの格ゲーとしてどうなの」とか言われてた『北斗の拳』も、あの人達がずっとやりこんで、このやり方なら面白いっていうのを見つけた結果、今ではコンボ格ゲーの代表例にまでなっている、と。

 

低評価をつけられているゲームってのは、不運にも面白く遊べる人、面白い遊び方を見つけられる人ってのがいなかったソフトなんじゃないかと、自分はそう思っています。だから、皆さんに「僕はこういう風に遊んだ方が面白いと思います」というのをお見せ出来る場にしたいですね、レビューよりは。遊び方を見つける、自分のプレイスタイルを見つける、ということも含めて「ゲームの面白さ」ですから。

 

※ミカド:東京・高田馬場にあるゲームセンター。レトロゲームや旧作の筐体が数多く稼働しており、ユーザー参加イベントを積極的に行なうなど、決して活況とはいえないゲームセンター業界にあって常にゲームファンに注目されている老舗。

 

※中野TRF:東京・中野にあるゲームセンター。2D格闘ゲームに強く、特にバグやゲームバランスの点で問題作と見なされていた『北斗の拳』(2005)の魅力を広めたことで知られる。

 

よむぺ:
なるほど、レビューというより、今まで見向きもされなかったゲームで「こういう楽しみ方もできるよ」というものを見せていく場である、と。確かに、それは「レビュー」とは少し違いますね。

 

工作員:
僕のニコ生は、基本的には「レビュー」ということでやっていますけど、最終的に僕はこう思っています、ということは言わないですからね。見てる方はご存知だと思いますが、「皆さんがそう思うなら、それが真実です」という形で、神ゲーという結論を出していますから。

 

よむぺ:
(笑)そう、工作員さんのニコ生と言えば、毎回必ず最後の結論が「このゲームは神ゲーです」で終わるんですよね。

 

工作員:
200回連続オチが一緒、という(笑)。

 

「とにかく、“E.T.は神ゲー”ってことです」

よむぺ:
今回、東京・中野ブロードウェーの「ゲームステーション」さんでE.T.展示会を開かれるということですが、すでに関西で一度展示されてますよね。

 

工作員:
はい、大阪日本橋のゲームショップ「ゲーム探偵団」さん(@game_tanteidan)で展示していました。

 

よむぺ:
その時に見に来た方の反応はどうでしたか?

 

工作員:
ちょくちょくコメントとか頂くんですけど、「色々言った結果が、ここまでボロボロにしたのか」という、僕の期待通りのことを言ってくれた方が半分くらい。もう半分は、「すっげークソゲー見せてくれてありがとう!」っていう……。

 

よむぺ:
(爆笑)

 

工作員:
「あなたのお金に感謝!」みたいな。

 

よむぺ:
素直ですね(笑)。

 

工作員:
素直な(笑)。半分くらいは理解してくれて、もう半分は「土から出てきたクソゲー見せてくれてチョー感謝です☆」みたいな、素直な意見。

 

よむぺ:
まだ反省しとらん人たちが……(笑)。

 

工作員:
ちょっと伝わってなかったですね(笑)。むしろ、僕が展示したことによって、「本当に土に埋められていたクソゲーが存在したんだ」みたいな、良くない都市伝説が生まれかねないので、そこが今回の失態でした。

 

よむぺ:
なるほど。まぁその辺りは、これからも工作員さんご自身がニコ生を通じて啓蒙活動を続けていく、ってことで……。

 

工作員:
って、宣伝じゃないの、それ(笑)

 

よむぺ:
ステマです(笑)(※)。

 

※模範的工作員さんのニコ生コミュニティ「低評価ゲームの魅力を検証しよう!」はコチラ

 

では最後に、展示会に向けて皆さんにメッセージなどあれば。

 

工作員:
展示会を通じて皆さんに一番強く言いたいのは、「E.T.は20ドル、アタリ2600は300ドルで買えます!」ということです。

 

よむぺ:
買え、と(笑)。

 

工作員:
「買え!」ですね。前にコミケの差し入れにE.T.を持って行ったら、すごく喜ばれました。「やった!E.T.だー!!」って。有名な人のサインとかと一緒に並んでましたよ、E.T.が。

 

よむぺ:
差し入れにE.T.(笑)。では、ゲームステーションさんにはE.T.を100本くらい緊急輸入してもらう、ということで……。

 

工作員:
すみません、それはちょっと責任が負えない(笑)。

 

よむぺ:
(笑)

 

工作員:
とにかく、「E.T.は神ゲー」ってことです。

 

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……いかがだったであろうか。

 

「E.T.は神ゲー」という、模範的工作員氏の突きつける問いは明確だ。

 

「我々はプレイもしないまま、ゲームの価値を決めていないか」。

 

皆さんには是非、発掘された「アタリE.T.」の姿を直接目にしながら、工作員氏の投げかけたこの問いへの答えを探して欲しい。

 

 

だれでも見れる!30年ぶりに発掘された伝説のゲーム「アタリE.T.」展示会情報

期間:2015年2月1日(日)~28日(日)

場所:「GameStation」 東京・中野ブロードウェイ2F

※写真撮影自由

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(ライター・アイキャッチ:よむぺ イラスト:カクノ

 

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