14/08/2014
「数学」に対して、あなたはどんなイメージを持っているでしょうか?
「むずかしい」「意味不明」「何の意味があるの?」「日本語でおk」「思い出したくない」などなど、さまざまな意見が飛び出してきそうです。しかも残念なことに、そのほとんどがネガティブなイメージ。数学好きの僕にとって、これはとても残念でなりません!
これまで多くの少年少女たちから忌み嫌われ続けてきた数学。
しかし近年、そんな嫌われ者の数学をテーマにした「数学マンガ」が増えてきていることを、みなさんはご存知でしょうか?
「えっ、数学マンガってなんかつまんなそう…」
「マンガ読んでるときも勉強しなきゃいけないの?」
と思った数学嫌いのアナタ!違います!!
「数学マンガっつっても大したことないでしょ?」
「ガ◯レオみたいにちょこっと数式書いてるのが数学マンガってこと?笑わせんなよ!」
と思った数学好きのアナタ!それも違います!!
数学マンガには、文系にとってはわかりやすく、理系にとっても読み応えのある、それでいて一つの漫画として純粋におもしろい作品が存在します。
今回はそんな数学マンガについて、いくつかご紹介していきましょう。
※今回ご紹介する「数学マンガ」とはあくまで数学をメインテーマとする漫画作品です。
上記2項目に該当する作品は「数学マンガ」には含んでいません。
2.『和算に恋した少女』(脚本・中川真、作画・風狸けん、監修・根上生也)
4.『数学ガール フェルマーの最終定理』(春日旬、原作・結城浩)
5.『数学ガール ゲーデルの不完全性定理』(茉崎ミユキ、原作・結城浩)
原作は、1973年に出版された、遠藤寛子による同名の少年少女向け歴史小説。
『算法少女』とは、もともと江戸時代の安永4年(1775年)に出版された和算書(数学の本)のことで、当時としては珍しい女性著者によるものでした。遠藤寛子による小説はこちらを元に書かれています。
物語は、原作の元となった和算書が出版された年と同じ安永4年から始まります。
算法(数学)が大好きな主人公・千葉あきが、旗本の子弟が掲げた算額(当時、数学の問題が解けると、その解答を絵馬や額に算額として記し、神社や仏閣に奉納していた)の間違いをつい指摘してしまったことから、さまざまな出来事に巻き込まれていくというお話。
手ぬぐいに描かれた紗綾柄の幾何学的な美しさを熱弁して友人たちを唖然とさせる初登場シーンなど、随所にあきちゃんの算法好きがうかがえて微笑ましい限りです。
登場する数学知識は、
「勾股弦の定理」(「三平方の定理」または「ピタゴラスの定理」)「三角形の相似」「楕円の面積公式の求め方」など。
これらの知識がわかっていなければ読めないというわけでは断じてありませんのでご安心を。
また、楕円の面積の公式に関して、通常は微分積分を根拠にして求められるところを、あきちゃんが大根の切り口から楕円の面積を求める糸口を発見する場面は激アツ!
難しく複雑な理論を使わずに、よりシンプルで美しい解法を発見することは、数学を愛する者にとって最上の喜びでしょう。
【難易度】★★☆☆☆(やや易〜標準:中学数学レベル)
【あきちゃんカワイイ度】★★★★★
『算法少女』と同様、舞台は江戸時代。
日本独自の数学である「和算」が大好きな少女・米倉律が、江戸で起こる難事件を和算の力で次々と解決していくミステリーです。
難しい数式などはほとんど登場せず、あくまで「数学的思考」で問題を解き明かしていくのが本作の特徴。
「知識」よりも「考え方」にクローズアップした作品になっており、数学が苦手な方でも難なく読めることでしょう。
また、作中に登場するちょっとした数学クイズもおもしろいです。
たとえば、
「二人の占い師がいて、甲は3割当たってお代は一両、乙は6割当たってお代は二両。どちらを選ぶ?」
「小判のたくさん入った袋が10袋あり、そのうち1袋には偽物の小判が入っていて、偽物は本物と重さが若干異なる。天秤を一回だけ使用できるとき、偽物の入った袋を特定するにはどうすればよいか?」
といった問題など、数学というよりもパズルとして楽しめるようになっています(問題の答えは記事の最下部に掲載しています)。
【難易度】★☆☆☆☆(易:算数レベル)
【考え方の視野が広がる度】★★★★★
結城浩氏による数学小説『数学ガール』のコミカライズ第一弾。
数学好きなら、原作小説を一度は書店で見かけたことがあるのではないでしょうか?
数学が趣味の高校生「僕」が、同じく数学が趣味で成績は学年トップ、長身・黒髪ロングの美少女ミルカさん、1年後輩で数学は苦手だが、素直で向上心のあるテトラちゃんと、さまざまな数学の問題を解いていく青春ストーリー。
登場する数学知識は、「フィボナッチ数列」「素数」「方程式と恒等式」「複素平面」「数列と母関数」などなど。
え?もう無理だって?いやいや、そんなことはありません。
この『数学ガール』がすごさは、作中に登場する数式が理解できなくとも十分に楽しめるというところにあるでしょう(実際、原作小説には「よくわからないときには、数式はながめるだけにして、まずは物語を追ってください」との記述があります)。
普通、数学はわからなくなったらどんどん嫌いになってしまいますが、本作はそうではありません。
1周目に読むときは全然わからなかった人も、2周目にはちょっとだけ数式に目を落としてみる。
するとそこから新たな発見がある、なんてところもこの作品の魅力です。
数学が苦手な人ほどまずはコミックスから入ることをおすすめします。ぜひ一度、手にとってみてください。
「数学ガール」シリーズは現在、原作が第三弾までコミカライズされています(残り二作品については後述します)。余談ですが、僕はこの第一弾の作画が、原作を読んでいたときのミルカさんとテトラちゃんのイメージに一番近くてお気に入りです。
そ…それにしてもこの「僕」、うらやましすぎる……。ミルカさんの前では生徒となり、厳しく指導され、テトラちゃん相手には先生となり、優しく教えてあげる………あぁああ!なんなんだコイツは!けしからんぞ!!
それによくもまあ美少女二人に囲まれながら饒舌に数学を語れるものです。
こんなこと考えてる時点で、僕なんか数学好きの風上にも置けませんねっ!
【難易度(通常パート)】★★★★☆(標準〜やや難:難関私大レベル以上)
【難易度(テトラちゃんパート)】★★★☆☆(標準:高校数学基礎レベル)
【こんな状況で数学なんか集中できない度】★★★★★
「数学ガール」シリーズのコミカライズ第二弾。
先ほども言及したように、現在まで刊行されている「数学ガール」シリーズのコミック版三部作はすべて作者が異なり、絵のテイストもだいぶ違います。自分の好きな絵柄を見つけるのも楽しみの一つでしょう。
そして『フェルマーの最終定理』からは「僕」の従姉妹で、「僕」に数学を教わるのが大好きな中学生・ユーリが登場。ちなみにこのユーリの作画、僕は第二弾が一番気に入っています。
登場する数学知識は、「原始ピタゴラス数」「整数と有理数」「最大公約数と最小公倍数」「素数指数表現」「フェルマーの最終定理」などなど。
通常パートであまり理解できなくても、テトラちゃんとユーリが登場する場面では楽しく数学が理解できると思います。わからなくなったらテトラちゃんとユーリに感情移入しながら読んでみてください(前作同様、飛ばして読んでも大丈夫ですよ)。
【難易度(通常パート)】★★★★☆(標準〜やや難:難関私大レベル以上)
【難易度(テトラちゃん&ユーリパート)】★★★☆☆(標準:中学数学〜中堅私大レベル)
【中学生の従姉妹に数学教えたい度】★★★★★
「数学ガール」シリーズのコミカライズ第三弾。
登場する数学知識は「ゲーデルの不完全性定理」「ペアノの公理」「数学的帰納法」「集合と論理」「極限」「形式的体系」「カントールの対角線論法」などなど。
いや〜、ここまで来ると大学受験数学のレベルは完全に超越してますね(大学数学以降の「数理論理学」の分野が中心です)。
僕は数学科でもなければ理系ですらないので、正直言ってこの辺りの分野は全然知りませんでした。だけど読むと不思議とわかります!(もちろんすべてを理解することはできませんが)
まあ、これはもう正直に言いますが、『ゲーデルの不完全性定理』に関しては数学嫌いな人は無理に読めとは言いません。ですが、少しでも気になった方はぜひ読んでみてください。そしてコミックを読んだ後は原作も読んでみることをおすすめします。そのとき、あなたの「数学的思考力」はとんでもなく飛躍しているに違いありません。そして何より、数学が大好きになっているはずです。
ちなみに第1巻の回想シーンで中学生時代のテトラちゃんが登場しますが、このテトラちゃんはシリーズ3作品のなかでも屈指のお気に入りですね。最高です。
【難易度】★★★★★(やや難〜難:難関私大〜最難関国公立大レベル以上)
【絵と内容のギャップ度】★★★★★
【中学生のテトラちゃん】★★★★★★
今回、最後にご紹介するのがこちら。
いままで「数学×少女」の組み合わせで来てたから最後もそうかな〜と思っていたそこのアナタ!
そうはいきません。
ネット上でも一時期話題になっていたので、すでに知っている方も多いかもしれません。小学館が運営する無料のWEBコミックサイト「裏サンデー」で連載されている寿司マンガです。
そう、あくまで「寿司マンガ」なので、今回ご紹介するかどうかは迷いましたが、内容が「寿司屋がただひたすら数学の話をし続けるマンガ」だったのでこれは数学マンガだろうということで、取り上げることにしました。
本作について、ここで多くを言及するのは野暮でしょう。
これはぜひ、ご自身の目で確かめていただきたい。
とりあえず本作品、「2ページ目からやってくる」ので最初から気を抜かずに注意してください。
健闘を祈ります。
【難易度】★★★★★★★★(もはや数学が難しいとかじゃない)
【寿司度】★☆☆☆☆
いかがだったでしょうか。本記事を最後まで読んでくださったということは、数学に関して、何か少しでも引っかかる部分があったからでしょう。数学が苦手な方でも、騙されたと思ってどれか一作品だけでいいので手にとってみてください。数学の奥深さ、おもしろさがわかっていただけるはずです。
また、今回ご紹介した作品以外にも、まだまだ数学マンガは埋もれているはず。見つけた方はぜひご一報を!
そして、これからも新しい数学マンガはどんどん生まれてくることでしょう。そうしていくにつれ、数学が文系・理系の区別関係なく、みんなから愛されるジャンルになってくれればいいなーと、勝手に願っております!
(本文・倉住亮多)
【問題の答え】
上の問題:甲を選んだほうが良い。甲が3割当たるということは裏を返せば7割はハズレるということ。甲にすすめられた逆を実践すれば良い。
下の問題:10袋をそれぞれ「袋1、袋2、…、袋10」としたとき、それぞれ小判を「1枚、2枚、…10枚」抜き取る。抜き取った合計55枚の小判を、本物の小判55枚と同じ重さのおもりと天秤にかけ、その差を見れば良い。たとえば、正規の重さよりも4枚分だけ軽(重)かった場合、「袋4」に入った小判が偽物である。
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