14/10/2014
10月8日、『東洋経済』主催イベント「大変革期に未来を語る!いま、メディアが面白い」が
東京・虎ノ門ヒルズで開催されました。
>> 東洋経済主催「大変革期に未来を語る!いま、メディアが面白い」SmartNews・ハフポ・Hulu…
スマートフォンやSNSの普及によってニュースの読まれ方が変わりつつあるなか、
ニュースメディアも日々トライアンドエラーを繰り返しながら様々な取り組みを行なっています。
当日は「スマートニュース」や「グノシー」「ハフィントンポスト」など
メディアの新時代を代表する面々が登壇し、「メディアとコンテンツの未来像」について語りました。
イベントの詳しい様子は「THE PAGES」のアーカイブ動画や、下記の記事をご参照ください。
>> メディアはどう生き残り、どう成長するのか 新旧の企業幹部が語る – withnews(ウィズニュース)
>> 「ニュースメディア第二世代の行方」書き起こし – d_tettu’s blog
さて、イベントの第一部「勃興!ニュースメディア第二世代のゆくえ」では、
ニュースキュレーションアプリの代表格「スマートニュース」と「グノシー」の話を中心に、
スマホ時代のニュースメディアのあり方について意見が交わされました。
(ライター撮影)
その中でも、今後メディア各社がますます力を入れていくことになるであろう
モバイル動画への取り組みに関する議論が興味深かったので、掘り下げてみたいと思います。
動画市場は、技術の進歩による動画配信コストの低下やスマートフォンの普及によって年々伸びています。
日本よりも動画ビジネスが先行しているアメリカでは、2013年の動画広告市場が約2800億円に達しました。
同時期の日本の市場は約132億円でしたが、2017年には約640億円まで急増するという予測が出ています。
>> これからのビジネスは動画が動かす! – 東洋経済オンライン(※ブランドコンテンツです)
ザ・ハフィントンポスト日本版編集長の高橋浩祐氏は、9月下旬にロンドンで行なわれた
各国のハフィントンポスト編集者が集まる会議にて、
世界中の編集者がモバイル動画に注目していたことを明かしました。
「モバイルを制するものがニュースを制する」時代、
動画コンテンツは、メディアがモバイルで広告を取るための効果的な方法です。
同氏によると、この分野ではヨーロッパが先行しており、イギリスやドイツの編集者は
文字と写真の編集のほか、ビデオの編集にも取り組み始めたといいます。
今後、日本の編集者にもこの3つの編集スキルが求められるようになるのは必至の流れでしょう。
今回のイベントに登壇したスマートニュースやグノシーを含むスマホニュースアプリの会社は、
基本的に独自の取材に基づく記事を書くことはありません。
新聞社やウェブメディアが配信する記事を独自のアルゴリズムや担当編集者によってキュレーションし、
アプリに掲載しています(最近「NewsPicks」がオリジナルコンテンツの配信を始めたので、
今後他社も追随する可能性は高いですが)。
そのため、コンテンツの中身が他社のアプリと被ることは往々にしてあり、各社は他社アプリとの差別化や
より多くのユーザーを獲得するために、アプリのUI設計にはかなり力をいれています。
記事本文の読みやすさや画像の見やすさについては、それぞれのアプリの「カラー」が
定まってきたような印象を受けますが、動画コンテンツに関しては試行錯誤の段階のようです。
スマートニュース執行役員の藤村厚夫氏は「ユーザーや配信メディアからのニーズは高まっているが、
どうやって動画を見せればユーザーに『ハマる』のかは、トライアンドエラーの段階」と述べました。
スマートニュースは今年の春先に「動画チャンネル」を開設しましたが、
動画コンテンツをカテゴリ化して一覧で表示すると喜ばれるのか、
それともテキストや写真を含むコンテンツの中に動画もある、という状況が好まれるのか等は、
まだ見極めの段階のようです。
藤村氏の話を受け、グノシー代表取締役の福島良典氏は「今後モバイル動画はどうなっていくか」
について、Facebookの例を挙げて意見を述べました。
Facebookは、先月7日からニュースフィードをスクロールすると動画を自動で再生する機能を
実装しました(設定画面からオン/オフは切り替えられます)。
「スマホは何も考えずに触っているメディア」(福島氏)なので、動画の自動再生という一見後ろ向きで
受動的な仕様が、実はユーザーの利用状況に適している、と福島氏は見ています。
たしかに、暇つぶしでぼんやりとタイムラインを眺めているときには、「再生ボタンを押す」という
たったワンクリック/ワンタップの動作すら面倒くさく感じますね。
また、福島氏は「音がなくても楽しめる動画」の可能性についても言及していました。
電車内など音を再生できない場所でも楽しめる動画や、ホームランを打った決定的瞬間を、
文字ではなく音のない短い動画で配信する、といった試みは、
スマホユーザーの潜在的需要に応えるアプローチだと思います。
以上、イベントで語られたニュースアプリの動画コンテンツへの取り組みについてまとめました。
スマートニュースのように動画コンテンツをカテゴリ化して一覧表示する仕様が良いのか、
グノシーのようにテキストや写真と同じように動画をコンテンツの中に盛り込むのが良いのか、
はたまたFacebookのようにニュースフィード上の動画を自動で再生してしまうのが良いのか。
ユーザー個人の好みによるところも大きく、正解はないと思います。
個人的に最近気に入っている動画ニュースアプリは「Yomerumo News」です。
「ニュースが動画でサクサク読める」という謳い文句の通り、
動画ニュースをサクサク消化することができます。
Facebookと同じように動画が自動で再生され、次の動画への遷移も自動(再生途中の場合は縦スワイプ)、
動画の長さも1分弱で、作業中に聞き流すのに最適な仕様だと思います。
ニュースアプリ戦国時代ともいえる昨今、その明暗を分けることにもなりそうなモバイル動画。
各社の取り組みから、今後も目が離せません。
(ライター・アイキャッチ:カクノ)
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