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バンドマンは東京になにを見出したのか?-同名異曲レビュー「東京」編

08/09/2014

 

僕がいままで聴いてきた楽曲のなかで一番重複が多かったタイトルは、「東京」だと思います。

 

あくまで僕の勝手な推測なのですが、「バンドで一発当ててやるぜ」というようなサクセス・ストーリーを思い描いて上京してきた若者たちが、音楽活動を通して社会の荒波に揉まれるなかで「東京」という街に抱いていった思いを、歌に込めているのではないでしょうか。

 

そこで今回は、「東京」というタイトルの曲を集めて、レビューをしたいと思います。

バンドマンたちは果たして、「東京」になにを見出したのか…

 

 

東京 / くるり

 

 

数ある「東京」のなかでもぼくが真っ先に思い浮かべるのは、「くるり」の東京、そしてその印象的なイントロのギターフレーズです。

 

くるりは、京都出身のバンド。「東京の街に出てきました」で始まる本曲はまさしく「上京ソング」です。

上京と言えば、そこに不可避に生じるの が「遠距離恋愛」。とても印象的な歌詞があります。

 

君がいるかな 君と上手く話せるかな

まぁいいか

でもすごくつらくなるんだろうな

 

何度も電話したくなって、電話して。

でも忙しなく 過ぎていく東京の流れのなかで、ふとした瞬間に「まぁいいか」と思う。

そんなどうしようもない侘しさをリアルに描いた名曲です。

 

 

東京 / 銀杏BOYZ

 

 

高校時代、熱心に聴いていたバンド「銀杏BOYZ」の「東京」。

 

作詞作曲を手がける峯田和伸は山形県出身で、この曲もいわゆる「上京ソング」。同曲は、同じく地方から上京してきた女の子との別れの歌。なんとなく鼻の奥がツンとなるような、冬の匂いを感じる曲です。

 

サビの「ふたりの夢は東京の空に消えてゆく」という歌詞から察するに、地方出身者にとって「上京」とはある種のアメリカンドリームのような意味合いがあるのでしょう。

そして、彼女は東京の水が合わなかったのか、「僕」と別れ、仕事を辞めて福島県の郡山に帰ってしまう。そんな経験がある人もいるのではないでしょうか。

 

人を愛するということはきっと 君が君以上に僕を愛してくれたこと

 

こんなどうしようもなく当たり前で、口にするのも憚られるような言葉の意味を、見失いかけているときに聴いてみてください。

 

 

東京 / GOING UNDER GROUND

 

 

胸キュンソングの帝王と僕が勝手に呼んでいるGOING UNDER GROUND。

 

埼玉県出身の彼らの「東京」は、上記の2曲とは少し趣が異なり、異邦人としてではなく、「内側から見た東京」を歌っています。

静かに淡々と進む曲調と、「気付けば今日もいつものコンビニでジュースを買って立ち読みをする」というような素朴な歌詞が、東京に住む若者のリアルな「日常」を描き出しています。

 

この曲には、僕が中学生の頃からとても好きだった一節があります。

 

たぶん僕らにきっと必要なのはガソリン代と少しの休日で ナビにたよらない旅に出てみようぜ

 

上京して夢破れ、実家に帰る女の子との失恋を描いた銀杏BOYZの「東京」。

その一方で、決して不満なわけではないけど、なにげない東京の日常からふと飛び出してみたくなる気持ちを歌ったGOING UNDER GROUNDの「東京」。

 

掲載したYoutube動画の冒頭で、ボーカルの松本素生さんが語っている「どこでも俺のホームだって生きていけばいいんだ 」という言葉、とても印象的でした。

 

ちなみに、この記事で挙げた「東京」のなかでも僕が最も好きな曲です。

 

 

東京 / メレンゲ

 

 

2014年の今年、米国シンクタンクが発表した世界都市ランキングにおいて、ニューヨーク・ロンドン・パリに次ぐ世界第4位の都市と評価された「東京」。

 

メレンゲの「東京」は、そんなキラキラした大都会の「光」と「影」を、山下達郎を彷彿とさせるシティポップ調の軽快な楽曲と皮肉めいた歌詞で表現しています。

 

「よそ者が集って愛を歌う」。「もう会えない人の渦」。「待つことのない待ち合わせ」。そんな風刺が効いた歌詞が続きます。

 

でも、僕はこの東京という即物的な街がどうにも嫌いになれません。憎めない奴なんですよね、東京って。兵庫県出身のクボケンジ が作詞作曲を手がけるメレンゲの同曲からも、東京に対する愛憎相半ばした思いが感じられます。これもひとつの「上京ソング」でしょう。

 

この街を好きになれるかどうかは、自分次第という気がします。

 

 

東京 / Mr.Children

 

 

さて、一気に年齢層が上がり、Mr.Childrenの「東京」を聴いてみます。

 

1992年のメジャーデビューからいままで、常に音楽シーンの第一線を走り続けてきたMr.Children。作詞作曲を手がけるボーカルの桜井和寿さんは、東京都練馬区出身です。第二期高度経済成長の真っ只中である1970年に生まれ、激変する東京を見つめて育ったのでしょう。

 

思い出がいっぱい詰まった景色だってまた破壊されるから できるだけ執着しないようにしている それでも匂いと共に記憶してる 遺伝子に刻み込まれてく この胸に大切な場所がある

 

当たり前のことですが、東京で生まれ育った者にとっては、東京こそが心やすらぐ故郷なんですね。

 

僕は東京出身ではないので、渋谷や原宿に行くときは少し身構えるのですが、そんなとき路地裏の老舗っぽい喫茶店のおじいさんなんかを見ると、すっと肩の力が抜けます。

 

東京で感じる独特の空気は、実は東京出身じゃないひとたちの無言の緊張感によって作り上げられているのではないでしょうか。僕もきっと、その一人なのですが。

 

 

おわりに

 

「異邦人として見る東京」、「第二の故郷としての東京」、「生まれ育った東京」。

 

ミュージシャンが鋭い感性で捉えた、それぞれの「東京」はいかがでしたでしょうか。

 

神奈川県に住んでいる僕は、埼玉県出身のGOING UNDER GROUNDの「東京観」にとても共感してしまいました。

すごく近いけど、マイホームではない。そんな微妙な距離感を、僕は東京に対して持っています。

 

ここで紹介したのは、「僕が持っている『東京』というタイトルの曲」のなかでも更に取捨選択したもので、まだまだ「東京」という曲はたくさんあります。

試しにJASRACの作品データベースで「東京」というタイトルを検索してみたところ、153件ヒットしました。これに、「Tokyo」や「タイトルに『東京』を含む」という条件で検索したものを足したら、更に膨大な数になるでしょう。

 

2020年開催の東京オリンピックに「歌にしたくなるまち、東京」というキャッチコピーを提案したいくらいですね。

 

同名異曲を探して比較してみると、多様な視点が発見できて面白いかもしれません。

 

(ライター:カガワ)

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