17/11/2014
2014年もそろそろ終わり。来年の頭には、論文やレポートの提出を控えている学生もいるだろう。
しかし、長い文章を書くことに苦手意識を持っている人は、割りと多いのではないだろうか。
実は僕もそのひとりで、漠然と文字を書き始めてみると、いつの間にか何を書きたかったのか見失ってしまったり、始めに書いていた内容と結論の整合性が取れていなかったりすることが、よくある。
そんなときは、全体の構成や流れをしっかり練ってから文章を書き始めると上手くいくだろう。
そこで役に立つのが、『アウトラインプロセッサ』というソフトウェアだ。
今回は、このソフトウェアのなかから僕が使っている『OliveneEditor』を紹介しながら、アウトラインプロセッサで構成を練ることの利点について説明していこう。
アウトラインプロセッサはいくつかあるが、僕がOliveneEditorを選択した理由は以下の4点だ。
① WindowsとMacのクロスプラットフォームで動き、どちらからも不具合なく編集できること
② 無料で利用できること
③ インストール不要でDropboxに置いておけば起動できること
④ txtファイルで生成されるため、他のソフトウェアでも編集できること
①に関しては、個人の環境次第だが、自宅ではWindowsのPCを、大学など外出先ではMacを利用する僕の場合は絶対条件だった。この条件を満たすソフトウェアがなかなか見つからなかったので、OliveneEditorの作者には本当に感謝している。
②に関しては絶対条件ではないものの、当然無料のほうがありがたい。当初は有料だが高機能なアウトラインプロセッサ「Scrivener」の購入を検討していたものの、Win版とMac版の両方を購入しなければならないのが馬鹿らしかったため、選択肢から外した。ちなみに記事末尾に後述するが、作者にカンパすることも可能だ。
③は手軽に導入できるところが魅力だ。立ち上げも早いので、急にアイデアを思いついたときでもすぐに作業に移行できる。
④は、例えば長文を書きたいときに別のテキストエディタで編集したいときなどに便利だ。また、今後OliveneEditorから別のソフトに移行したくなったとき、txtファイルで元データが残っていれば簡単に移行できる。
まとめると、「WinとMacのクロスプラットフォームでシンプルかつ軽量なアウトラインプロセッサが欲しい貧乏学生は迷わずOliveneEditorを選びなさい!」ということだ。
Wikipediaの「アウトラインプロセッサ」で「特徴」の項を見ると、以下のような記述がある。
長文の場合、大雑把な文書構成を決めてから、見出し(ノード)を付けていき、ブロック単位で細部についての記述を追加していく、という手法が取られることが多い。アウトラインプロセッサを使えば全体の構成がツリー表示され、現在の編集位置を把握しながら文章を記述することができる。また、ブロック単位で階層構造を上下に移動させたり、位置を入れ替えたりすることができるので、長文を作成する機会が多い小説家やライターに愛用者が多い。
OliveneEditorも「ツリー型」の発想に基づいて設計されている。
ツリー型構造で文章を分解すると、ひとかたまりのロジックを文章の「パーツ」のように扱える。
考え方としては、PowerPointなどでプレゼンのスライドを作ることに似ている。このメリットは、議論の流れを俯瞰して検討する際、パーツを組み替えるように容易に修正できることだ。
さて、では実際に僕の修士論文を導入事例に、OliveneEditorの操作画面を説明しよう。
※一部モザイク加工を施している
あくまで一例だが、僕は上記のような構造にしている。
まず、画面左側、青い枠で囲っている部分について説明しよう。
フォルダやファイルがツリー型に配置されている。
プロジェクト名「修士論文」の直下には、「1 研究の目的と方法」や「4 考察と残された課題」など、「章単位」のフォルダが入っている。また、一番下にある「アイデア」というテキストファイルは、いつでもアイデアを書き込めるように僕が設置したテキストファイルだ。
「章単位」の直下には、「見出し単位」のフォルダが入っている。「「1 研究の目的と方法」の直下にある「1 目的と背景」や「3 仮説と方法」などがそれだ。
更に「見出し単位」の直下には、「本文」「構成」という二つのテキストファイルがある。
次に、画面右側、赤い枠に囲まれた部分について説明しよう。
こちらはテキストエディット画面だ。
画面上部、黄色い枠で囲った部分に、「本文」と「構成」というタブが開いている。現在は「構成」が選択されており、テキストエディタにはその内容が表示される。
このように、テキストファイルのタブはいくつでも開いておくことができる。
ちなみに、以下のように、フォルダそのものにもテキスト入力が可能だ。
では、僕が実際に使っている方法を説明する。
まず、最下層に位置する「構成」というフォルダには、その「見出し単位」において必要な内容を「箇条書き+メモ」というような形で書き込んでいく。必ず入れるべき引用などのメモも記入する。
場合によっては、この「構成」の下にさらにノードをつくってもいいだろう。
ここで重要なのは、なるべくひとつのノードをひとかたまりのロジックとして完結させることだ。
社会学者のルソーは、カードにひとつのロジックをまとめ、それを組み合わせることで論文を執筆したという。
実は、このような発想で文章を捉える「思考形式」こそ、アウトラインプロセッサを使う最大の利点と言える。ロジックが積み重なって文章ができあがるということを意識すれば、内容がグッと引き締まった文章が書けるはずだ。
「構成」がある程度まとまったら、「本文」のタブを開き、議論の流れを意識しながら文章を書いていく。ツリー型構造を横目に見ながら文章を書くことで、現在自分が書いている文章の前後関係を見失わずに済むだろう。
また、実際に文章を書くことで、うまく議論が繋がらなかったり、ロジックが破綻したりしていることに気づくだろう。そのときは改めて、構成を見直せばいい。
このように、タブを切り替えて構成を参照しながら論文を執筆するという往復作業が、OliveneEditorのみで完結するわけだ。
わざわざ構成を練ってから文章を書き始めるのは、一見すると二度手間に見えるかもしれない。
しかし、かっちりした構成さえ決まってしまえば、あまり悩むことなくすらすらと文章が書けてしまう。
長い文章になればなるほど、アウトラインをしっかり描くメリットは大きくなる。
また、構成を練るだけであれば、実際に文章を書き始めるよりも心理的負担が少なくて済む。
例えば締め切りの半年前から実際に論文を書き始める気にはならなくても、パーツだけコツコツと揃えておけば、後々だいぶ楽になるだろう。
今回は論文を素材に説明したが、小説のプロット作成として使う人も多いようだ。
レポートやブログなど、ちょっと長い文章を書くときは、気軽に使ってみてほしい。
以下のページからOliveneEditorをダウンロードできる。
http://olivinecafe.info/software/olivineeditor/
ちなみに、同ページには作者の戸日塚涼様にカンパする方法が記載されているので、実際に使ってみて気に入ったらカンパするとよいだろう。
僕はほんの気持ちだけカンパしました。ありがとうございます。
ライター:加川
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